今更、昔の事を思い出すなんて、何かの前触れだろうか…−−そんな事を思いながらナマエは曇り空を眺めていた。そう、あの時も曇り空だった。







師 と 私 と 






「妙な天気ですねぇ」

『師匠、』

「晴れもせず、雨も降らず…ま、ぼくちんには関係ないけど」



窓辺に佇むナマエの隣に足を運ぶケフカ。ナマエが眺める空をケフカも一緒に眺めた。



『それより師匠、間もなくドマとの交戦が始まるのでは?』



この処、ドマとの交戦が続いていた。ナマエはケフカを師とし、ケフカの補佐に当たっている。もしケフカに出動要請があれば、ナマエも一緒…と言いたいところであるが、ケフカはそれを一度も許した事がない。



「ンー、そういえばレオが今朝から煩かったねぇ」

『師匠もお呼び出しされるのでは…』

「どうだか」

『お供を…』

「ダーメ」

『…また、ですか』



…――いつもだ。師匠はいつも私を置いて戦場へ行ってしまう。教えてもらった事、覚えた事が沢山あるのに。全然生かせられない。師匠と出会ってからの数年間、全て師匠の為にと思って過ごしてきたのに。


ナマエは甘く唇を噛み締めながら目を泳がせた。




「ナマエは大人しくワタシの帰りを待っていれば、それで良いんですよ」

『ですが、』

「もし、」

『・・・?』

「そんなにぼくちんの傍に居たいのであれば、ナマエ…アナタがぼくちんの代わりを務めなさい」

『え、』



ケフカの思いも寄らぬ言葉にナマエは目を丸くし驚いた表情を見せる。



『それは、つまり…私が手を下せ、と…?』

「ピンポーン!それがナマエに出来ますか?」

『・・・ッ、』



それはつまり、私の手で命を奪えという事…。この手で葬り去るという事…。



「ヒヒヒッ…ナマエ、アナタの力ならぼくちん程とはいかずとも敵軍を一掃出来る力を持っているでしょう」

『ですが、私はどちらかというと…回復魔法の方が得意なので、攻撃なんて…』

「確かにそうですねぇ、ナマエの回復魔法は素晴らしい。ですが生かせる機会なんて、中々ないでしょう?ぼくちん、怪我なんて滅多にしないしねぇ」




敵だろうが味方だろうが、誰かを傷付けた事なんて今までに一度もなかった。




『も、申し訳ありません…私には…』

「じゃあ、イイ子に待っててちょ」




ナマエは再び唇を噛み締めると、ケフカから顔を逸らし小さく頷いた。頷くしかなかったのだ。






…――それから程なくして、ケフカに出動要請が下された。




『師匠、どうかお怪我のないように』

「ダイジョーブだってぇ、ぼくちんを誰だと思ってるの」

『・・・、』




ケフカはニンマリと笑みを浮かべると戦場へと向かった。






(ヒッヒッ…さァて、今回はどれだけ壊してやろうか)






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