(廊下の奥の右側…って言ってたよね?という事は此処で良いのかな?)



クダリ君に案内された通り、部屋を出て廊下を進むと奥の右手に扉があった。多分、此処が風呂場なのだろうとドアノブに手を掛け扉を開けてみた。



「あ、お風呂場だ…」



ナマエは風呂場の脱衣所に入ると扉を静かに閉め、身に着けていた服を脱ぎ始めた。



「うー、寒…!早く温まろう…!」



ナマエは身体にバスタオルを巻き、風呂場に足を運ぶと風呂桶に湯を張り、肩から"ザーッ"と湯を掛け浴槽にゆっくり浸かった。



「はぁ…気持ち良い〜…」



それにしても広いお風呂だなぁ…。二人暮らしなのに凄い贅沢!やっぱり、ノボリさんもクダリ君もお金持ちなんだなぁ…羨ましい…。



ナマエは湯船に浸かっては、更に顔まで沈めプクプクと気泡を立てながら寛いでいた。クダリに手当てして貰った指先は湯に浸けないよう気を付けている。



(気持ち良過ぎて、このまま寝ちゃいそう…)














*****









一方、クダリに風呂を進められたノボリは真っ直ぐ風呂場へ向かっていた。



(ナマエがクダリの部屋で本、ですか…。本を読むなんて珍しいですねぇ…)



それにしても、クダリの言葉が少し引っ掛かります…。妙な笑みも浮かべていましたし…、まさか…何か企んでるんじゃ…。

…ー否、そんなわけないですよね…。クダリがナマエさんに手を出すなんて流石に考えられませんし…。



ノボリはネクタイを緩めながら脱衣所に入ると白いワイシャツを脱ぎ、ナマエの脱いだ服に気付かぬまま、ナマエの服の上にワイシャツを被せるように置いてしまった。

勿論、その事にすら気付いていないノボリ。制服である黒いズボンと下着を一緒に脱いでしまえば、ワイシャツの上に再び被せるように置いた。ナマエの服が、まさか自分の服の下にあるとは思ってもいないだろう。

ナマエが風呂に入っている事など一切知らないノボリは、タオルを片手に浴室の扉をガラリと開けた。









『え…!』


「…え?」








…ーー暫しの間、浴室に流れる沈黙。







『ノ、ボリ…さん…?』

「ナマエ、さん…」

『な、何で…ぇ、ヤッ…き、きゃぁあああッ!!』

「す、すすす、すみません!!」





叫び声を上げるナマエを目の前に、ノボリは慌てて浴室の扉を勢い良く閉めた。




(…ーーな、何でナマエさんが…!?ナマエさんはクダリの部屋で本を読んでたはずじゃ…ま、まさか…!)





「は、嵌められた…」








全 て の 原 因 は 、








「そろそろ頃合かなー?ノボリとナマエ、どんな反応するんだろー?」




(嗚呼、でも…ボクがノボリに怒られちゃうかもなぁ…)






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