『あの…ノボリさん…』

「はい?」

『何で…そんなに手際が良いんですか…?』

「て、手際…ですか?」



クダリは風呂の準備に、残ったノボリとナマエは二人揃って夕食の準備をしていた。








全 て の 原 因 は 、








勢いで「手伝う」とは言ったものの、料理が大の苦手だったナマエは後々後悔する事になった。



『私なんて、包丁握るのも怖いのに…』

「握る事が、ですか?…ふふ、可愛らしいじゃないですか」

『全然!…あ、もしかして…クダリ君も料理上手なんですか?』

「…いえ、クダリは上手という程ではないですね」

『そうなんだ…』



ノボリさんが料理上手だからクダリ君も料理上手なのかと思っちゃった。やっぱり得意不得意は違うんだなぁ…。

テキパキと料理を作るノボリさんの隣で、私は慣れない包丁と格闘しながら人参の皮を剥いていた。

暫くすると、部屋の奥からドタドタと床を走る音が聞こえてきた。



「ノボリ!ナマエ!お風呂沸いたよ!」

『わわッ!?』

「コラ、クダリ!」



キッチンにやってきたのは風呂を沸かし終えたばかりのクダリだった。

ナマエが包丁を持っているにも関わらず、お構いなしにナマエの背中から勢い良く飛び付くクダリ。



『……ッ』

「ナマエ…!血が出てるじゃないですか!」

「え、嘘!血!?」



包丁を握っているところにクダリが飛び付いてきた為に、その反動で包丁で指先を切ってしまったナマエ。

ノボリは慌てて、ナマエの手を取り傷口を確認した。クダリは未だナマエの背中にくっ付いたまま様子を眺めている。



「傷口は浅いですね…」

『だ、大丈夫ですよ!ゴメンなさい、これくらいで痛がっちゃって…』

「ゴメンね、ナマエ。痛い?大丈夫?」

『うん、大丈夫だよ』

「クダリ、好い加減にナマエから離れて下さい」

「ぶー、ノボリのケチ」



ノボリに叱られたクダリは口先を尖らせながら、ナマエから渋々離れた。



「血が止まりませんね…」

『大丈夫です!そのうち止まりますか、ら…え、ちょ…ッ!』

「あー!ノボリがナマエの指、舐めてる!」

『…んッ、』



未だ止まらぬ血を舐め取り、傷口を塞ぐように舌を指に這わせるノボリ。ナマエの表情は傷口から走る痛みとノボリの舌の動きの不思議な感覚に眉をひそめている。



「は…、少し止まりましたね」

『ノ、ボリさん…』

「きちんと消毒をして絆創膏を貼っていれば直ぐに治るでしょう」

「ナマエ、ホントにゴメンね?」

『も、もう良いから…』

「全く、大事にならなくて良かったのものの…」

「ゴメンなさい、ノボリ。ちゃんと反省する!」



ペコリと頭を下げて詫びるクダリに、ノボリはやれやれと溜息を吐きならナマエの肩を抱いている。



「じゃあ、ボクがナマエの手当てする!」

『え、良いよ…!このままでも平気だから!』

「ダメ!ちゃんと手当てするの!」

「そこはクダリの言う通りですね。手当て、きちんとして貰って下さい。夕食の準備は私が済ませてしまいますから」

『でも…』

「ほら、行くよ!こっち来て来て!」

『ちょ、クダリ君…!』




クダリはナマエの怪我をしていない方の腕を掴みキッチンからナマエを連れ出した。






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