『お邪魔しまーす!』

「何もない所ですが、どうぞ入って下さいまし」



今日はノボリさんの家にお泊り。…正確に言えばノボリさんとクダリ君の家なんだけど…。

ちなみにノボリさんとはカナワタウンに観光した行った際に出会って、それから交流も深まり今では大切な存在……つまり、恋人同士なのだ。



「ノボリ、おかえり!」



玄関で靴を脱いでいると、家の奥からクダリがパタパタと小走りで遣って来て、ノボリとナマエを出迎えた。








全 て の 原 因 は 、








「只今帰りました」

『こんばんは、クダリ君!』

「あれ、ナマエだ!何で、何で?何でナマエがボク達の家に居るの?」

「今日だけ泊まって頂く事にしました」

『ゴメンね、突然来ちゃって…』



ナマエが謝ると、クダリはブンブンと首を横に振り「ううん!ナマエが来てくれて、嬉しい!」とニンマリと笑いながら言った。



「さぁ、玄関は寒いので中に入りましょう」

「部屋の中、ポカポカ!」



ノボリさんに手を引かれ、連れて行かれた先は広いリビングだった。二人暮らしには少し広すぎるような気もするが、流石はサブウェイマスター。リッチな暮らしっぷりだ。



『ひ、広い…』

「そうですか?」

『充分広いですよ…!私の部屋なんて…もっと、こう…』

「ナマエの家、行ってみたい!」

『ええ…!?』

「こら、クダリ。迷惑が掛かる事はお止しなさい」

「えー!ナマエ、ボクが行ったら迷惑?」

『う、ううん…そんな事はない、けど…』



…――うん、決して迷惑ではないのだ。



私はクダリ君に「そんな事はない」と答えつつも、視線だけを"チラッ"とノボリさんに向けた。



実は未だ、ノボリさんも私の家に来た事が一度もない。それなのにクダリ君を先に家に招待するのは非常にマズイ事なのだ。

ノボリさんはあまり感情を表に出さないけど、何となくではあるがノボリさんの感情が少しだけ分かるような気がする。表情からとかじゃなくて、その時の雰囲気だとかで…。



「じゃあ、行っても良いよね?」

『う、うーん…』



(…来ても良いけど、ノボリさんが来てくれた後しか招待出来ないなー…)






「クダリ!好い加減にして下さいまし!」

『…!』

「ノ、ノボリ…?」





普段、温厚なノボリさんが突如クダリに向かって怒鳴った。突然の出来事にナマエもクダリも一体何が起きたのかと驚きの表情を浮かべていた。





「ノボリ…、怒ってる?」





流石のクダリも、ノボリの怒鳴り声には普段のようなニコニコとした笑顔は浮かべていられない様子。




『ノボリさん、そんなに怒らなくても…』

「…ッ!…す、すみません…私とした事が…」



自分でも"まさか…"というような表情を浮かべているノボリ。無意識のうちでクダリに怒鳴ってしまったようだ。



『大丈夫、ですか…?』

「…ええ、平気です。それより、驚かせてしまいましたね…」

『す、少しだけ…』

「ノボリ…、ボク、悪いこと言っちゃった?」



ノボリに怒鳴られ、少し落ち込んだ様子のクダリ。何か悪い事をしてしまったのかと不安そうにしている。



「いいえ、悪いのは私です。クダリが悪いわけではありませんよ」

「ホント?」

「ええ、本当です」



そう言いながら、ノボリはクダリの頭に手を伸ばし優しく頭を撫でた。頭を撫でられ元気を取り戻したクダリにナマエもホッと一安心。



「さて、夕食とお風呂の準備をしないといけませんね」

『あ、あの…!何か手伝える事ありますか?』

「…そうですね、でしたら夕食の準備を手伝って頂けますか?」

『も、勿論!』

「じゃあ、ボクはお風呂の準備する!」

「ええ、頼みますよ」



クダリは再び小走りで風呂場へと向かった。残ったノボリとナマエは夕飯の準備に取り掛かった。






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