『ヤナップー!何処に居るのー?!』
デントを街に残し、一人で街を出たナマエ。向かった先は三番道路から少し進んだヤグルマの森。此処には野生のヤナップが生息している。もしかしたら、森の中に迷い込んだ可能性も考えられる。
『ヤナップー!』
"ガサガサ"と生い茂る草木を掻き分けながら森の奥へ進んでいくナマエ。
昼間でも森の中は薄暗く、陽が差していない所では夜と同じくらい暗かった。
Serendipity
『ヤナップ、何処行っちゃったのよー…、お願いだから出て来て…』
今更、一人で森に来てしまった事を後悔してしまうナマエ。自分が迷子になる事は、まず考えられないが、やはり不安は募る。
暫く辺りを探っていると、目の前の草村が大きく揺れた。恐る恐る、揺れる草村に近付くナマエ。そして草村をそっと掻き分けた。
『……あ!』
「ヤナッ…!?」
草村の中に隠れていたのは間違いなくヤナップだった。しかし、ヤナップの隣には別のポケモンの姿もあった。
『えっと…、デントのヤナップだよね…?』
確かに姿はヤナップであったとしても、デントのヤナップかどうかは見た目だけでは判断し兼ねる。
何となくではあるが、デントのヤナップっぽい雰囲気はする…。
「ヤーナッ!」
ナマエの問い掛けに大きく首を縦に振るヤナップ。どうやらデントのヤナップに間違いないようだ。
『良かったー…、ずっと探してたんだよ?』
「ヤナヤナァ…」
ヤナップは申し訳なさそうに目尻を下げた。そして、隣に居たポケモンに視線を移すヤナップ。
『ヤナップ、そのポケモンは…?』
「ヤナァ…」
隣に居たのは、こばとポケモンのマメパトだった。よく見ると翼を怪我しているようだ。
『ヤナップ…、もしかして、このマメパトの手当てをする為に森へ…?』
「ナップ!」
『でも、何で街からわざわざ森にまで来たの?』
「ヤナヤナッ!」
ヤナップは足元に生えていた草を千切り、ナマエへ差し出した。
『これ…薬草?』
「ナップ!」
前にデントから教えて貰った事がある。草にも色々な種類があって、中には熱冷ましに使える薬草や傷口に使うと治りが早くなる薬草があるって…。
ヤナップはこの事を知っていて、わざわざヤグルマの森へ薬草を摘みに来たんだ…。
『事情は分かったわ。でも、黙って街から出るのは駄目だよ?きっと、今だってデントは心配してると思うよ?』
「ヤナ…」
『それにしても、このマメパトは街で見つけたの?』
「ナップ!」
ナマエの問い掛けに再び首を縦に振るヤナップ。
つまりは…バオップ、ヒヤップ、ヤナップの三人だけで居る時に、ヤナップだけが怪我を負っていたマメパトに気が付いて、その手当てをする為にヤグルマの森に来たって事か…。
『ヤナップ、デントの所に帰ろう?』
「ナ、プゥ…」
ヤナップは怪我を負ったマメパトを心配そうに見つめている。
その光景を見るに見兼ねたナマエはヤナップの傍で横たわるマメパトをそっと抱き上げた。
「ヤナ…?」
『大丈夫だよ、ヤナップ。マメパトも一緒に連れて行くから』
「ヤナッ!?」
『だから帰ろう?』
「ナーップ!」
ヤナップは嬉しそうにその場で"ピョンピョン"を飛び跳ねてから、ナマエの肩へ飛び乗った。
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