「嗚呼、どうしよう…」

『どうしたの?デント』



普段、落ち着いているデントが珍しく慌てていた。周囲をキョロキョロ見渡して何かを探している様子に思える。








Serendipity








「困ったなぁ…」

『そんなに慌てちゃって…何か探し物?』

「あ、ナマエ。いや…それが、その…」

『……?』

「ヤナップが居なくなったんだ…」

『へぇ、ヤナップが…』



ん…?ヤナップ…?

待って待って待って!ヤナップってデントのヤナップの事だよね!!?



『うぇぇえええッ!!?』

「その反応じゃ、ナマエもヤナップの居場所は知らないみたいだね」

『ゴ、ゴメン…知らない。でも何で居なくなっちゃったの?!』

「それが僕にも分からないんだ。さっきまでヒヤップとバオップとヤナップの三匹でお互いを競い合ってたみたいなんだけど、気付いたらヤナップだけ居なくなってたんだ」



自身の口元に手を当て、心当たりがないか思い出そうとするデント。しかし、今のデントには何の心当たりもなかった。



『突然居なくなるんて…』

「屋内には居なかったから、今度は外を探してくるよ」

『あ、待って!私も行く!』

「ナマエも?」

『当たり前でしょ!早く見つけ出さないといけないし、一人よりも二人の方が確立は倍なるし!』

「すまない、それじゃ頼むよ」



未だ慌てた様子のデントはヤナップを探しにナマエを連れて外へと向かう。

既に陽が沈み掛けており、空は綺麗なオレンジ色に色付いていた。



「ヤナップー!何処に居るんだー?!」

『ヤナップー!出ておいでー!』



ジムの周りを一通り探してみるもヤナップの姿は何処にも見当たらなかった。



「参ったな…」

『本当に心当たりないの?』



ナマエの言葉に再び頭を悩ませるデント。やはり、いくら思い出そうとしても心当たりはないようだ。



『でも急に居なくなったって事は何かあったって事だよね…?』

「嗚呼、そうに違いないよ」

『そういえば、ヒヤップとバオップと一緒に居たんなら聞いてみれば良いじゃない!』

「聞いたさ。聞いたけど、何も知らないみたいだったよ」

『一緒に居たのに何も知らないなんて…、それも変な話ね…』

「全く…、何処に居るんだ…?」



デントの表情がどんどん落ち着かない表情になっていく。

無理もない。親友とも言えるであろう大切なパートナーが突然居なくなってしまったのだ。きっと本人にしか分からなければ、計り知れない辛さと不安を感じている事だろう。

そんなデントの気持ちを全て分かってあげられないナマエも、また同じように辛さを感じていた。



『わ、私…ちょっと街の外見てくる!』

「え…おい!ナマエッ!」



(絶対にヤナップを探し出してみせる!デントのあんなに辛そうな顔、見たくない…!)



ナマエはデントの呼び止める声に一切聞き耳立てず、駆け足で三番道路へと向かった。





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