「あーもー、疲っれた。全く人使いが荒過ぎなんですよ」
愚痴りながら自室へと足を運ぶ、ド派手な格好をした一人の魔導士。
『ケフカ様、おかえりなさい』
ケフカの部屋に居たのは"ケフカ様"と呼ぶ一人の女性…――ナマエだ。
ケフカの身の回りの世話をするよう数ヶ月前から命じられている使用人である。
「ハイ、ただいま、ナマエちゃん。ぼくちんが居ない間、変わりはなかったですか?」
『はい、特に問題もなく!…あ、そういえば、レオ将軍が先程お見えになったくらいですね』
「えー、アイツが?」
『はい!お呼びしますか?』
「え、いいよ。アイツの顔見ても全然面白くないし」
『あ、あはは…』
ケフカは疲れた表情でソファーに座ると、ちょいちょいとナマエに向かって手招きをする。
「ナマエ、此方へ」
『え、と…よろしいのでしょうか?』
「うんうん、ナマエが来ないと疲れなんて癒えないから〜」
『で、では失礼して…』
ナマエは座る前に一度、ケフカの前で小さくお辞儀をしてからケフカの隣へ腰を下ろした。
「おや、ぼくちんの膝の上でも良かったんだよ〜」
『え、そんな!お、恐れ多いです…』
ブンブンと首を横に振るナマエ。
「別に気にする事ないのにねぇ」
『…ですが、私はケフカ様の身の回りのお世話をするよう命じられているだけの者ですから…』
ケフカはそう言うナマエの横顔を横目でじっと見つめた。
「ナマエちゃんさー」
『はい?』
「ぼくちんと一緒で鼻が高いよねぇ」
『えっ、そうでしょうか?』
ナマエは、自分の鼻を右手で軽く触れてみせた。
『ケフカ様の方がとても綺麗なお鼻ですよ』
お世辞ではない素直な言葉と共に、のほほんとした笑顔を見せるナマエ。そんな彼女の表情にケフカもつられて少しだけ口角を上げた。
『あ…』
「ん?どうしたの、ナマエちゃん」
『あ、いえ…鼻だけじゃないなぁって思いまして』
「…というと?」
ケフカが尋ねるとナマエは少しだけ顔をピンク色に染めた。
『えっと、いつもケフカ様のお顔はお化粧で隠れていて分かり辛いんですが、どのパーツも整っていて、その…とても美しい、です…』
"私ってば何言ってるんでしょう!"…と小声で呟きながら、顔を両手で覆い隠すナマエ。そんなナマエの片手をそっと握るケフカ。
『ケ、ケフカ様…?』
「そんな事を平然と言われてしまっては…」
ケフカはナマエの肩を掴むと自分の方へを抱き寄せた。
「我慢、できませんねぇ」
『ケ、ケケケ、ケフカ様…!?』
普段起きない突然の出来事にナマエはぐるぐると目を回し混乱している様子。
「ま、お陰で疲れも吹き飛びましたよ」
ケフカはさらにナマエを抱き寄せると、ナマエの身体をそのままソファーに押し倒しナマエに覆い被さった。
『ケフカ様、ど…どうしたのですか…?』
未だに状況が掴めていないナマエ。どうして良いのか分からず、ただただ固まっている。
「ナマエちゃん、食べちゃってイイ?」
『た、食べる…?』
「そう、食べるの」
『どどど、どういう意味で…』
「こういう意味」
言いながらケフカはナマエの首元にかぷり、と甘く噛み付いてみせた。
『ひゃ…ッ!』
首元に走るチリッとした痛みにギュッと目を閉じるナマエ。
「あら、イイ声」
『ケフカ様…あの、その…』
「いーのいーの、どうして良いか分かんないんでしょう?」
『えと、はい…申し訳ありません…』
「謝る事ないよ、ぼくちん大満足だから』
ナマエを真っ直ぐ見つめながら、ナマエの細くて少し猫っ毛な髪を優しく撫でる。
「ナマエちゃん」
『は、はい』
「ナマエちゃんは、これからもずっとぼくちんの傍に居てくれます?」
『も、勿論です…!その、ケフカ様が迷惑じゃなければ…』
ナマエの返事を聞き、更に満足そうにニッコリと笑みを浮かべるケフカ。
「そいじゃ、続きはまた今度」
ケフカはナマエから手を放し、覆い被さっていた態勢を元に戻した。
『つ、続き…?』
「うん、ナマエとの時間はこれからも沢山あるようですし。ゆっくりでも良いでしょう」
『い、一体、何のお話で…』
「フヒヒッ、鈍感なナマエちゃんも悪くないですよ」
ケフカの言っている意味が分かるのはこれから数日後の事だった。
果 て し な い 時 を 、
(これから、たーっぷり可愛がってあげますから、覚悟しておく事ですねェ)
--END--
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