『みーんな、おっはよー!』



今朝のサンヨウシティの降水確立はゼロパーセント!快晴に恵まれた一日だ。

洗濯日和だり、お布団だって干せそうなくらい良い天気。天気の良い日はサンヨウジムのレストランに来る御客サンだって多いし、ジムへの挑戦者もチラホラ。

きっと忙しい一日になるんだろうなー、なんて思いながら、私は開店前のサンヨウジムの扉を開いた。



「やぁ、おはよ。ナマエ」

『おはよう、デント!今日は良い天気だね』

「うん。天気が良いと気持ちも清々しく感じるね」



ジムの扉を開けると、まず一番に視界へと入ってきたのはデントの姿だった。どうやら、ホールの準備をしているらしい。



「ところで、こんな朝早くに来て…何かあったのかい?」

『ううん、今日は忙しくなりそうだと思って手伝いに来たんだよ』

「そっか、有難う。ナマエは優しいね」

『や、優しくなんかないよー…』

「謙遜しない、しない。本当に助かってるんだからさ」



(別に謙遜してるわけじゃないんだけど…デントにそう言われると、何だか恥ずかしくなっちゃうな…)



「照れちゃって可愛いなぁ…」

『て、照れてなんか…ッ!』

「そういうナマエの可愛いところ、僕は大好きだよ」

『ふぇ…?』



"大好き"

珍しくデントが"大好き"なんて言葉を使ってくるもんだから、私の胸は異常なくらいにドキドキと高鳴ってしまうわけで。

デントはこのドキドキを一体どう対処してくれるのだろう…、なんて考えてみたが、きっと対処する気なんて全くないんだろうなぁ。



「何を朝っぱらから口説いているんですか?」

『コ、コーン…!』

「別に口説いてたわけじゃないんだけどなぁ…」



デントを目の前にドキドキを胸を高鳴らせていると、突如背後からコーンが遣って来た。どうやら、私の姿を見て厨房から来てくれたみたい。



「ナマエさん、おはよう御座います」

「お、おはよ…!」

「…コーンこそ、僕とナマエの仲を邪魔しに来たの?」

『えッ!?』



(デントと私の仲ァア!?何を突然…!)



「そうですよ。何か問題でも?」

「問題大有りだよ」



(いやいやいや!二人とも、ちょっと待ってー!私から言わせてみれば、デントとコーンの会話の方が問題大有りなんですけどォオ!)



『いや、あの…二人とも、一体何の話を――…』

「問題大有りなのはデントの方でしょう。朝からナマエを口説くだなんて信じられませんね」

「だから、口説いてるんじゃないって言ってるだろ」

『…――って、全然聞いてないし!』








「ナマエーッ!グッモーニィインッ!!」








『ぅげふッ!!?』






突然、私の視界が前後にグラついた。それと同時に肩から全身にかけて重い何かが圧し掛かった。



「ナマエー、今日も俺に会いに来てくれたんだなー!流石は俺様の惚れた女だぜ!」

『ぐ、苦しい…』

「ちょッ…ポッド!ナマエさんから離れなさいッ!」

「そうだよ!ナマエが苦しがってるじゃないか!」

「うわッ!やめろ!俺に触ンな!ンでもって、ナマエにはもっと触ンなッ!」

『ぅ、ぐぇ…』



背中から上半身を覆うように私を抱き締めていたのはポッドだった。そして、ポッドを私の身体から離れさせようと私の両腕を引っ張るコーン。更にポッドの両脇に両腕を滑り込ませポッドを私の身体から引き剥がそうとするデント。

…この状況、すっごい辛いんですけど!コーンが腕引っ張るから腕が千切れそうだし、首元にポッドの腕が回ってるからデントがポッドを反対側に引っ張ると首が絞まるし……コイツ等は私を殺す気かッ!!?



『ぐ、ぐる…じぃ…ってば…』



首が絞まる所為で本当に苦しい。御陰様で私の今の顔は白粉を塗りたくったように青白くなってる気がする…。



「…ハッ!ナマエさん…!?」

『うぅ…』



血の気が引いて、ぐったりとしたナマエの様子に漸く気付いたコーンは掴んでいたナマエの両腕を慌てて離す。その瞬間、反対側に引っ張っていたデントの力で、下からデント・ポッド・ナマエの順に床へと勢い良く倒れ込んでしまった。



「うわぁあッ!?」

「ちょ、オイ!ぐぇ…ッ!?」

『ぷはッ…うぉわッ!?』



ドーンと勢い良く床に倒れ込んでしまった三人を気まずそうに覗き込むコーン。



「す、すみません…!ナマエが苦しそうだったので、手を離したら…」

「アイタタタ…」

「クソ痛ってー!コーン、何すんだよ!?」

『ゼェ…ハァ…!』

「本はと言えば、ポッドがナマエさんに抱き付いたのが原因なんでしょう!?何でコーンが責められてるんですか!大体、ポッドはナマエの彼氏でも何でもないんですから安易に抱き付いたりしないで下さい!」

「うっせェ!ナマエは俺が惚れた女なんだから俺の嫁サンになるって決まってンだよ!なぁ?ナマエ」



あの…「なぁ?」とか言われても困るんですけど。いやもう、ホント切実に。



「それを言うなら、僕だってナマエに惚れてるよ?ナマエこそ、僕のお嫁サンに相応しい女性さ」

「待って下さい。コーンだってナマエさんに惚れているんです。ナマエはコーンのお嫁サンになるんですよ?」



一体何でこうなったんだ、と言わんばかりの表情を浮かべながら三人の会話に呆れた様子のナマエ。



(私、忙しい日になるんじゃないかと思って手伝いに来ただけなのに…!何で、こうなっちゃうかなァア!?)



「何言ってンだよ!俺が先に言い出した事だろ!?だから、ナマエは俺の嫁サンだ!」

「そんなのは屁理屈と言うんですよ?」

「先に言い出したからって図に乗るのは良くないよ、ポッド」

『あの…私、やっぱり帰ります…それじゃ――…』



小声でそう言いながら、ナマエは床から起き上がると少しずつ扉の方に向って後退った。…が、その行動も三つ子の三人によって抑止されてしまった。



『…ひぇえッ!』



三人の手によってガッチリと掴まれてしまった両腕。後退ろうにも後退れない…そんな、どうする事も出来ない状況にナマエは金魚のように口をパクパクさせている。



「ナマエ、何処行くんだい…?」

「まさか、この状況から逃げ出そうなんて考えていませんよね…?」

「まぁ、逃がさねェんだけどなぁ…」

『いや、あの…ちょ、イィヤァァアアアッ!!』







恐 ろ し き 欲 望








(今日一日…否、これから先もサンヨウトリオに振り回されそうな予感がしてならないです…)






--END--

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