「ナマエ、ただいまー」
『お帰りなさい、クダリさん』
「うん、ただいま」
カナワタウンにある、とある一軒家。他の家の何ら変わりない家に住むのはサブウェイマスターのクダリとその恋人であるナマエ。
「今日は物凄く疲れちゃった」
『例の幽霊列車ですか?』
「うん。その幽霊列車の所為」
数日前、地下鉄の運行時間外にノボリさんやクダリさんが管轄していない謎の列車が走行しているという話を聞かされた。それが幽霊列車だ。
『その幽霊列車はどうなったんですか?』
ナマエはクダリが羽織っていたコートを抱え、クダリと共にリビングへと向う。
「無事に解決したよ」
クダリは"ニッコリ"と微笑みながらナマエの問い掛けに答えるが、クダリの表情には少しばかり疲れの色が伺える。
『それなら良かったです』
「うん」
『流石はサブウェイマスターですね』
「ううん、今回はボクやノボリ兄さんで解決したわけじゃないんだ」
『え、そうなんですか?』
「確か、名前はサトシ君だったかな…」
『サトシ、君…?』
「ナマエ、デント君の事は覚えてるよね?」
『デント君…嗚呼、確かサンヨウシティの?』
(確か、デント君って地下鉄好きの男の子だったはず…)
「サトシ君はデント君の仲間でね」
『そうだったんですか』
「旅の途中に幽霊列車の被害に遭って、彼等のポケモンも奪われそうになっちゃったんだ」
『ええ…!?』
他人のポケモンを奪うなんて、何て極悪非道なの…。
「だから、何としてでもポケモン達を取り返そうと身体を張って、最後には見事な連携プレーで全てのポケモン達を取り返したんだよ」
『凄い…!』
「ボクやノボリ兄さんだけじゃ、奪われたポケモン達は取り返す事は出来なかったと思う…」
『じゃあ、サトシ君達は救世主ですね!』
「うん、子供に助けられちゃった。でも、子供の考える事って凄く単純なんだ。だけど、その単純さの御陰で地下鉄の平和や奪われたポケモン達を守る事が出来たんだよね」
『クス…』
クダリの話を聞き、"クスクス"と小さく笑うナマエにクダリは子供のように"ぎゅむっ"と抱き付いた。
「何、笑ってるの…」
『いえ、クダリさんが珍しく能弁っぽかったものですから…』
「そうかな?」
『まるで、ノボリさんみたいです』
「ボクとノボリ兄さんは双子の兄弟だし、似通ってても可笑しくないよー」
『それもそうですね』
「それよりもさ、ナマエー」
『ん?何ですか?』
「ボクも地下鉄を守る為に一生懸命頑張ったよ」
「はい、お疲れ様でした」
よしよし、とクダリの銀髪を優しく撫でるナマエ。クダリは気持ち良さそうに目を細めている。
「やっぱり、ナマエが傍にいると凄く落ち着く。疲れも吹っ飛ぶよ」
『そう言って貰えると凄く嬉しいです』
「ねぇ、ナマエ」
『はい?』
「これからも、ずーっとボクのナマエで居てくれるよね?」
『え…』
普段、口にしないような言葉を紡ぐクダリにナマエは一瞬驚いた表情を浮かべる。
「居て、くれるよね…?」
再度、尋ねるクダリ。その表情は何処か寂しげに伺える。
そんなクダリに向って、ナマエは小さなリップ音と共に軽い口付けを送った。
『ちゅ、』
「…――ッ!」
『そんなの当たり前です。私はずっとクダリさんの傍に居ますよ』
「うん!ボクもずっとナマエの傍に居る、絶対に離れない!」
ボ ク の 居 場 所
(ずっとずっと、ナマエだけを愛してるよ)
--END--
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