「ナマエ、ナマエ!ねぇ、ナマエ!」



業務を終え、疲れ切ったナマエのもとへ白いコートを羽織った人物が駆け寄って来る。



『あのねぇ、クダリ…そんなに名前連呼しなくても聞こえてるわよ!』

「だって、いつも無視するから」

『…で、何か用?』

「今日、一緒に帰ろう?」

『は?』



(一緒に帰ろうって言われても、帰り道反対方向なんですけど…)



クダリの言葉に呆れた表情を浮かべるナマエ。そんなナマエを他所にクダリは普段通りニコニコと口許を上に吊り上げている。



『帰り道、反対方向だよ』

「知ってる!だから、今日は僕の家にお泊り!」

『はぁ!?』



なーに勝手なこと言っちゃってくれてんの、この子は!?何が理由でクダリの家に泊まらなきゃなんないのよ…!



「だから、一緒に帰ろう!」

『…お断り』

「えー!?何で、何で?一緒に帰ろうよ!」

『だって、クダリの家って言ってもノボリさんが居るでしょ。ちゃんと許可取ったわけ?』

「うーん、…取ってないよ?別に許可なんて要らないでしょ?」



いやいや、ちゃんと許可貰わないとノボリさんに迷惑が掛かるでしょうが!…――って言おうと思ったけど何言っても無駄なのは知っていたから敢えて言わなかった。



『もう、何でクダリはいつも勝手に物事決めちゃうんですかー』

「そんなの決まってる」

『いや、決めないで下さい』

「ボク、ナマエのこと大好きだから!」



クダリは普段と変わらない表情で「大好きだから!」と言ってきた。…――にしても声が大き過ぎるよ、クダリさん。誰か居たらどうすんのよ…!



「ほら、ナマエ、帰ろう!」

『ホントに勝手なんだから…』

「ちゃんと手も繋ぐんだよ」



クダリは白い手袋を外し、ナマエの手を半ば強引に握り締めた。クダリの掌からはポカポカとしたクダリの温かい体温が直接伝わってくる。



『ノボリさん、怒らない?』

「うん、きっと大丈夫」

『きっと、ですか…』




(まぁ、偶にはクダリと一緒に帰るのも悪くない…かな?)






帰 る 場 所






クダリの住む家に到着するとノボリさんが出迎えてくれた。…けど、微妙に驚いてる気がする…。そりゃ、無理もない…来るはずの予定がない人物がクダリと一緒に居るのだから。



「ナマエ、さん…?」

『こ、こんばんは…』

「ノボリ!今日、ナマエ、家に泊める!」

「え、えぇ…!?」

『い、一応…断ったんですけど…』

「クダリ、貴方という人は…」



(嗚呼、ノボリさん…やっぱり困ってる…)



「ノボリ、怒らないで。ナマエ、泊めても良いでしょ?」

「…仕方ありませんね」

「やった!ほら、ナマエ!中に入って!」

『わわ、そんなに押さないでよ…!』





…――ボク、クダリ。ナマエの事が、大好き!いつか、僕の家が、ナマエの家に、なりますように!





--END--

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