あの後、コーンとポッドは二人で顔を合わせニヤニヤしながら、ナマエとデントを残し部屋を後にした。



「というわけで、ナマエ」

『な、なんでしょう…?』



(デントの顔、笑ってるのに何だか怖い…)



「お店のことはコーン達に任せたから、暫くは僕に付き合って貰うよ?」

『付き合うって一体何に…って、キャッ!!?』



いつの間にか視線の先には天井が。その天井を覆い隠すように、直ぐにデントの顔が目の前に現れた。



『デ、ント…?』

「僕が怒ってるの分かってる?」

『わ、私…、デントに何かした…?』

「直接的ではないけどね」



鋭い視線を向けてくるデント。しかし、彼を怒らすような事をした覚えはひとつも無かった。



「ナマエってさ、いつもジムに挑戦しに来たトレーナーに優しく接するよね」

『そ、それは…』

「さっき来てたトレーナーにも優しく声掛けてたしさ」



…――デントは嫉妬していた。ジムへの挑戦者が来る度に、行き過ぎた優しさを挑戦者に向けるナマエに。

負けたトレーナー相手に対しては、ナマエ自身…励ましていただけかもしれない。勝ったトレーナーに対しては素直に喜んでいただけかもしれない。

しかしデントにとって、その光景を見るのがいつも苦になっていたのだ。何故、自分以外に優しく接するのか、理解が出来なかった。




「ナマエは僕のモノなんだよ?僕の前だけで笑って居れば良いんだ」

『デント、どうしちゃったの…?』



おかしなモノでも見るような瞳でデント見つめるナマエ。そんな瞳で僕を見ないでくれ、と言いたいようにも見えるデントの表情。デントの頬にピタリと触れたナマエの掌をデントは片手で掴み引き剥がす。それと同時に驚いたような表情を浮かべるナマエ。

デントはナマエに無理矢理口付けると、唇の隙間から舌先を割り挿れ、逃げ回るように動くナマエの舌先に自らの舌先を絡めた。深く、更に深く。



『んぅ…、んッ!』



苦しそうなナマエ。無理矢理口付けたから息継ぎするタイミングが掴めないのだろう。仕方なく、デントはナマエの唇を解放した。解放したと同時に深く呼吸をし始めるナマエ。



『は、はぁッ…』



デントはナマエが身に纏っていた服を下着ごと胸元の上まで押し上げた。



「もう硬くなってる。無理矢理キスされて感じたんだ?」

『ち、違ッ…!』



デントは既に硬くなっていた胸の先を貪り付くように吸い付き、舌先を器用に使ってはコロコロと転がすように愛撫し、時折甘噛みするように歯を立てる。



『ンッ!…や、めて…デント…ッ』

「やめないよ、ナマエが反省するまでは」

『反省って…ぁんッ!』



(デント、本当にどうしちゃったの…?)



『…ッく、ひく…』

「・・・ッ!」



理由が分からないナマエは遂に涙を流してしまった。デントは涙を流し始めたナマエに驚きの表情を浮かべ、それと同時にデントの中で罪悪感が生まれた。



「ゴ、メン…。泣かせるつもりは無かったんだ…」

『ど、して…こんな…ッ』



目の前で泣き始めてしまったナマエにデントはどうして良いのか分からなくなってしまった。泣かせるつもりなんて無かった。

泣きじゃくるナマエを目の前に、デントは脱力しながら暫く考え、反省すべきなのは自分なのだと、ナマエを優しく抱き締めた。



「反省するのは僕の方だね…」

『デ、ント…』

「ただ嫉妬していただけなんだ…」

『え…?』

「僕以外に優しさを見せるナマエに嫉妬してた」




きっと幻滅されただろう、デントは心の中で呟いた。嫌われても仕方が無い、と。




『本当に、それだけ…?』

「え…?」

『他には何もしてない…?デントを苦しませるようなこと…』

「…うん、嫉妬していただけだよ」



ナマエはデントの背中に腕を伸ばしギュッと力強く抱き返した。



『ゴメンなさい、デント…』

「どうしてナマエが謝るんだい…?」

『良かれと思ってしていた事がデントを苦しめてたなんて、ちっとも気が付かなかった…』

「…ううん、僕も少し勝手過ぎたよ」



私がデントを苦しめて、嫉妬させるような事をしてきていたのは事実。その事に対して全く気が付かなかったのも、また事実。

もし私がデントの立場だったら、デントと同じように嫉妬して独りで苦しんでいたかもしれない。ううん、してたはず。



『これからは、気を付けるから…』

「ナマエ…」

『だから、私のこと嫌いにならないで…?』

「な、なるわけないよ!寧ろ、嫌われたのは僕の方じゃ…」

『ううん、嫉妬してくれて嬉しかった』



嬉しかったって、変な言葉かもしれないけど…。本当に嬉しいって思った。私の事、それだけ想っていてくれてたんだって感じるもの。だから嬉しかった…。



「ナマエ…、本当にゴメン…」

『もう謝らないで?』

「だけど…」

『今回はお互い様、ね?』

「ナマエ…、有難う…」



やっぱりナマエの優しさには誰もが癒されてしまうんだろうな。さっきまで勝手に嫉妬していた自分が嘘みたいに居なくなってしまった。



『大好きだよ、デント』

「うん、僕もナマエのこと愛してるよ」







甘 い 果 実







「オイ、コーン…!中の様子はどうなってんだ…!?」

「押さないで下さいよ、ポッド!デント達にバレてしまうでしょう!?」

「場所交代しろ!今度は俺様の番だッ!」



扉の向こう側では、室内の様子を探ろうとポッドとコーンが二人で揉め合っていた。そんな主人達をバオップとヒヤップは少し離れた場所で見守っていた。



--END--

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