『幽霊列車ぁ?』
「ええ、そうなんです」
『またまた何で?』
「それは私にも分かりません」
突如、ノボリに聞かされた幽霊列車の話。どうやら、ノボリやクダリの知らない列車が毎晩の如く地下鉄内を走行していると言うのだ。
『運行ダイヤ以外の時間に幽霊列車が走ってるって事だよね?』
「そういう事になりますね」
『へぇ、何だか気味が悪いね…』
「全くです」
気味が悪い、と言うナマエの言葉に"コクン"と首を縦に振って頷くノボリ。
「地下鉄を荒らす輩は断じて許す事は出来ません」
『ノボリにとって地下鉄は聖域と同じだもんね』
「必ず幽霊列車の謎を解き明かします」
『うん、でも…』
ナマエは呟くように言葉を紡ぎながらノボリの背後へと回る。瞬間、ノボリの背中にナマエの温もりが伝わった。
「ナマエ…?」
『無理だけはしないで…』
地下鉄の事も心配だけど、私が一番心配なのはノボリさん自身。
もし、原因究明の最中に怪我なんかしたりしたら…そう考えると気が気でならない…。
「ナマエ…」
『勿論、地下鉄の事も心配だよ…?だけどさ…――ッ!』
ノボリの事が一番心配だと言う事を伝えようとした瞬間、今度はナマエ自身にノボリの温もりが伝わった。
「…――大丈夫ですよ、ナマエ」
『…ッ、』
「ですから、そんな顔しないで下さい」
ナマエの表情は心配と不安で一杯になっていた。下手をすれば泣いてしまうのではないか、という位に。
「必ず地下鉄の安全を取り戻して来ます」
『…そ、そうじゃなくて…!』
「分かっていますよ、ナマエ。私もクダリも必ずナマエの元へ帰って来ますから」
『ホント、に…?』
「本当です。ですから、笑顔で見送って下さいませんか?」
普段、無表情なノボリが微笑みながらナマエに問い掛ける。その瞬間、ナマエが抱えていた心配や不安は一気に消え去ってしまった。
『ん…分かった!』
「有難う御座います」
『じゃあさ、私の御願い聞いてくれる?』
「どんな御願いです?」
『今晩、ノボリのベッドで一緒に寝たいな』
「どんな御願いかと思えば…勿論、良いですよ」
Your Smile
翌朝、私は精一杯の笑顔でノボリを仕事へ送り出した。本当は少しだけ不安だけどノボリさんなら、きっと大丈夫だから。
『…――いってらっしゃい!』
--END--
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