「貴女様の戦い振り、決して悪くはありませんでした。ただ、僅かながら、私達が貴女様を上回ったようです。ただ、私としてはもう一度お手合わせを願いたい!是非!是非!またの御乗車をお待ちしております!」
…――バトルサブウェイ、シングルトレイン。バトルサブウェイのボスとも言える人物、ノボリに私は敗北してしまった。
『あのさー、毎回毎回同じこと言うの止めてくんない?』
現在、0勝7敗。スーパーシングルトレインではないにも関わらず、まだ一度もノボリに勝利した事がなかった。
「これも仕事です、我慢して下さいまし」
『だってその言葉聞かされたの7回目なんだもん』
「ならば、早く強くなって私に勝利すれば良いでしょう」
『ノボリのバーカ』
あーあ、何でノボリに勝てないんだろう…。ノボリが待ち構える7両目に辿り着くまでは簡単に勝てちゃうのに。
「さぁ、終点です。降りて下さいまし」
『やだ』
「我侭はいけませんよ、ナマエ」
『疲れた、眠い、怠い、もう歩けない』
「全く、貴女という御人は…」
ナマエの言葉に呆れ果てたように片手で額を押さえるノボリ。ナマエに何を言っても無駄なのは百も承知の上だが業務に支障が出ては困るとナマエを列車から降ろそうとした。
「好い加減にして下さいまし」
少し怒ったような強い口調をナマエに向ければ、ナマエはムッとした表情を浮かべながら、座席から立ち上がり出口へと移動し始める。
「足元には御気を付けて」
全く差がないわけではない車体とホームに躓かぬよう注意を促すノボリ。すんなり列車から降りてくれると思っていた。…――が、それは大きな勘違いだった。
『今から始点に戻って、もっかいノボリに会いに来るから!』
そう言ってナマエは笑う事のないノボリの唇に"ちゅ、"と口付ける。同時に列車内にも僅かではあるが小さなリップ音が響いた。
「…――なッ!」
一瞬、何が起こったのかと目を瞬かせるノボリ。口付けを受けた自身の唇に指を当てながらナマエの姿を確認しようとするも、目の前にナマエの姿はなく既にナマエは列車から降りホームを走っていた。
「ホームは走らないで下さいまし、」
最早、ナマエには聞こえない事は分かっていてもホームを走る姿を見ては黙っていられないノボリであった。
負 け ら れ な い 理 由
「何度でも会いに来て下さいまし。ただし、私も負けるわけにはいきません…」
…――負けてしまっては、それで終わりなのですから。
--END--
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