「ミジュマル、みずあそび!続けてジェルブレード!!」
「みずあそびか。ほのおタイプの威力が半減しちまうが、それだけじゃ俺様のバオップには適わないぜ!バオップ、あなをほる!」
「バオッ!」
ポッドの指示にバオップは地面に潜り、挑戦者のミジュマルの足元から攻撃を仕掛けた。
「ミジュマル、足元に気を付けるんだ!」
「ミ、ミジュッ!」
「この勝負、このコーンが見る限りではポッドの勝ちですね」
「うーん…。あのミジュマル、良い味醸し出しそうな感じはするんだけど…」
「ただ結構耐久性はありますね、あのミジュマル」
「うん、ホタチも上手く利用しているしね。でも、もうひと風味足りないんだよなぁ…」
甘 い 果 実
「バオップ!トドメのかえんほうしゃ!」
「バァアオ――ッ!」
「ミッ…、ミィイジュ――ッ!?」
「ミジュマルッ…!」
勢いに乗っていたバオップのかえんほうしゃを正面から受けたミジュマルは、その場で戦闘不能となった。
『ミジュマル、戦闘不能!よってこの試合の勝者、ジムリーダー・ポッド!』
試合の審判をしていたナマエが試合終了の合図を掛けた。
「よっしゃ!良くやったな、バオップ!流石、俺様のバオップだぜ!」
「バオッ!」
試合を終えたバオップは岩場をジャンプしながらポッドへ飛び付いた。
「僕のミジュマルが…!」
挑戦者の少年は戦闘不能となってしまったミジュマルを抱き上げ、少し悔しそうにミジュマルを見つめている。
『そのミジュマル、とても君に懐いているのね』
「審判の、お姉さん…?」
『試合は残念だったけど、ミジュマルの試合を見ていて君がミジュマルに沢山の愛情を注いでいるのが伝わってきたの』
ナマエは挑戦者である少年の元へ歩み寄るとミジュマルの頭を掌でそっと撫でた。
「ミジュマルは僕が初めて持ったポケモンなんです。初めてのジム戦、勝たせてあげたかったな…」
『ポケモンとの絆は勝ち負けだけじゃない、負ける事も大切な事なの。だから、そんなに落ち込まないで次に繋げていくと良いわ』
ミジュマルを抱えながら、肩を落とす挑戦者にナマエはニコリと微笑み、励まそうと声を掛けた。そのお陰か、挑戦者の表情も明るくなり「ありがとう」とナマエに礼を告げた。
「また強くなったら挑戦しに来いよな!楽しみにしてるからよ!」
『ポッド…』
「はい!もっともっと強くなって今度こそバッジをゲットします!」
「おう!楽しみに待ってるぜ!」
挑戦者はモンスターボールにミジュマルを戻すと礼儀正しく一礼をし、サンヨウジムを後にした。
「流石、ナマエ」
『デント…何よ、流石って…?』
「ううん、何でもないよ」
『何それ、変なデント』
試合を観戦していたデントはナマエの元へ歩み寄ると、ナマエの肩にポンと手を置いた。
「オイオイ…まさか此処でイチャつくんじゃねぇだろうな?」
その光景を見ていたポッドがナマエとデントに鋭く突っ込む。
「別にイチャつくつもりはないよ」
『ポッドってば、変なこと言わないでよ!確かにデントとは恋仲だけど…』
…――そう、私はサンヨウジムの三兄弟の一人であるデントとお付き合いをしている。まだ付き合い始めて一ヶ月くらいだけど…。
「ねぇ、ナマエ」
『ん?なぁに、デント』
「ちょっと、この後時間あるかな?」
『え、時間?お店にお客さん居なければ平気だと思うけど…』
デントからの突然の誘いに少し戸惑うナマエだったが、顔には出そうとせずに平静を保った。
「コーン、ポッド」
「…わかってますよ。お店の事はこのコーンとポッドに任せて下さい」
「結局、イチャつくのかよ!」
「少し黙って、ポッド。それじゃあ、お店の事は二人に任せるよ。用が済んだら直ぐに戻るから」
(え…、ちょっと何三人で勝手に話し進めてんのよ…!いや、うん…デントと二人っきりになれるのは嬉しいけども、何だか嫌な予感がする…)
「大丈夫ですよ、デント。ゆっくり用を済ませて下さいね」
「…ありがとう、コーン。そうさせて貰うよ」
コーンの言葉にニコリと笑みを浮かべるデント。その表情をデントの隣で見ていたナマエは軽い身震いを覚えたのであった。
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