「はぁ…コーンとした事が、まさかポッドを傷付けてしまうとは…」
開店前、厨房で溜息を吐きながら落ち込んでいたのはジムリーダーのコーンだった。
幾日が経っただろうか、もう一人のジムリーダー、そして三つ子の兄弟でもあるポッドが家を飛び出してしまったのである。
家出も言っても、直ぐに連絡は来るだろうと思っていた。…が、連絡は一切なかった。
「ポッドは無事なんでしょうか…」
日が経つ毎に落ち込みが激しくなくコーンを傍で見ていたナマエも気が気ではなかった。
『コーン、大丈夫…?』
「ナマエさん…」
『ポッドなら、きっと元気でやってるよ…だから、そんなに落ち込まないで…?』
「ですが…」
『コーンが悪い訳じゃないんだし、ね?』
…ナマエさんは優しい人だ。いつだって、コーンを傍で支えてくれた…たった一人の恋人。そんな彼女にコーンは甘え過ぎているんじゃないか、と・・・少々不安を感じつつある。
「有難う御座います、ナマエさん…」
『どう致しまして』
けれど、どんなにナマエさんがコーンを励ましてくれてもポッドの事が心配なのには変わりない。ポッドのバトルスタイルを否定してしまった事は事実。そして、ポッドを傷付けてしまったのも、また事実。
『コーン…』
落ち込み続けるコーンの名を優しく、そして囁くように紡ぐナマエ。更に彼女はコーンの姿を見兼ね、背中から包み込むようにコーンの身体を抱き締めた。
「…――ッ!ナマエ、さん…?」
『コーンがそんなに落ち込んでちゃ、私も心配で仕方ないよ…』
ナマエさんの声は震えていて、今にも泣き出しそうな声だった。
「すみま、せん…」
『ポッドなら大丈夫だよ…だから、コーンも元気出して…』
「ナマエさん…」
…――嗚呼、やっぱりコーンは…ナマエさんに甘え過ぎていたんだ。コーンが不安になればなる程、ナマエさんも同じように不安を感じていたんだ。
「本当にすみません、ナマエさん…」
『ううん…』
「それと…大好きです、」
繋 が り
あれから数日後、旅の最中だったデントから連絡があり、ポッドと一緒に居ると知らされた。
そして、デントの御陰で家出をしていたポッドがジムに戻ってきたのである。どうやら、デントのテイスティングを受けてポッド自身のバトルスタイルをきちんと理解したようだ。
漸く、仲直り出来た事にナマエさんも喜んでいた。そして、その表情は何処か安心していた。
『仲直り出来て良かったね、コーン』
「はい、有難う御座います」
『今度こそデント君が帰って来るまで、ちゃんと仲良くして待ってなきゃね?』
「ええ、おっしゃる通りです」
『…フフッ、でも本当に仲直り出来て良かった』
…――気の所為だろうか、ナマエさんの満面の笑顔を久々に見たような…そんな気がした。
(やっぱり、ナマエさんは優しい人だ…)
--END--
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