「37.8℃…風邪ですね」

『んー…』



ベッドに横たわるナマエの傍らで体温計を眺めながら溜息を吐くコーン。



「ヒヤップと遊ぶのは構いませんが、調子に乗って水浴びなんてしないで下さい」

『だって水遊びしてるヒヤップが気持ち良さそうだったんだもん・・・』

「ナマエは馬鹿ですか」

『馬鹿じゃない』

「充分馬鹿ですよ。ヒヤップとナマエの身体の造りは違うんですよ?」

『そんなの分かってますぅ…』



熱で赤く染まった頬をプクッと膨らませながら、コーンから顔を逸らすナマエ。その様子を見ていたコーンは再び溜息を吐いた。



「ナマエ…」

『どーせ私は馬鹿ですよーだ』

「何拗ねてるんですか…」

『コーンが馬鹿って言うから』

「・・・、馬鹿と言ってしまった事は謝ります…ですが、こうして風邪を引いて熱を出してしまったナマエも少しは反省して下さい」

『むぅ…』



コーンは冷水が張った洗面器にタオルを浸し、直ぐに取り出すとギュッと濡れたタオルを絞る。

絞ったタオルを綺麗に折り畳むと熱くなったナマエの額に絞ったタオルを乗せた。



『ん…、冷たくて気持ち良い…』

「治るまで安静にしていて下さいよ」

『えー…』

「"えー…"じゃありません。コーンの言う事を聞いて下さい」

『じゃあさ、私のお願い聞いてくれる?』

「お願い?」



ナマエは不思議そうな表情を浮かべるコーンの手を取ると、熱くなった自身の頬にコーンの手をピタリと当てた。




『治るまで私の傍に居て欲しい』




熱のせいで真っ赤になっている頬を更に赤く染めながら恥ずかしそうに言葉を紡ぐナマエ。

コーンはナマエの"お願い"とやらに一瞬ドキッとし、次第にコーンの頬も赤く染まっていった。



『コーン、顔赤いよ?風邪移ったー?』

「…ッ!…かも、しれませんね」



自身の顔がどんどん熱くなっていくのがよく分かる。別に恥ずかしいわけではない。ただ、何の気ないナマエの言葉に嬉しさを感じているだけだ。

コーンは赤くなる自身の顔を覆い隠すように腕を当てた。



『熱計るー?』

「…好い加減、からかうのは止して下さい」

『えへへ、だって今のコーン可愛いんだもん』

「男性に向かって可愛いとか言うもんじゃないですよ」

『じゃあ可愛いって思わせないで欲しいでーす』



ああ言えばこう言う。何を言っても無駄のようだ。



「…ほら、ちゃんと安静にしていて下さい」

『傍に居てくれる?』



先程と同じ問い掛けにコーンは更に顔を赤く染めながら、無言でナマエに掛かっている毛布をナマエの肩まで掛け直す。



『ちゃんと返事して下さーい』



私がお願いしてるんだからイエスかノーくらい言ってくれれば良いのに。

コーンからの返事を気長に待っていると突然視界が暗くなったと同時に、唇に柔らな感触が伝わる。



『風邪移るよ?』

「この際、移っても構いません」

『移ったら一緒に布団で安静にしなきゃね』

「…それも悪くないですね」



ふわりと柔らかな笑みを浮かべたコーンは再びナマエの唇に口付けた。




熟 し た 林 檎 の 如く




…―――翌朝、





「コーン、お前馬鹿だろ。ナマエより超馬鹿だろ」

「本当。コーンと同じ兄弟って思うだけで恥ずかしくなるよ」



ポッドとデントが見下ろす視線の先にはナマエと共に熱を出して寝込むコーンの姿が其処にはあった。



(馬鹿でも何でも良いですよ…、ナマエが直ぐ隣に居るんですからね)





--END--

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