「有難う御座いましたー」
本日最後のお客様である男女二人組みのカップル。閉店間際に帰って行く、その二人組みのカップルをデントは店の外まで見送った。
店自体の営業は終わったものの、まだまだ閉店後の後片付けが残っている。
「ふぅ、まだまだこれからだな…」
デントは少々疲れている様子でハァ…と小さな溜息を吐きながら店内へ戻った。
「おー、デント。お客さんは帰ったのか?」
店内に戻るとポッドがホール内の清掃を始めていた。
「うん、帰ったよ。それにしても、今日は忙しかったね」
「…だな。普段も忙しいけど、今日はそれ以上って感じだったぜ」
「明日は今日よりも落ち着いてくれると良いんだけど…。あ…僕、厨房の方を手伝ってくるよ」
「おう、頼んだぜ」
ホール内の清掃はポッド一人に任せても大丈夫だと判断したデントは、一番忙しいであろうキッチンの片付けを手伝う事にした。
きっと、コーンが一人で大量の食器を洗っているに違いない。
「コーン、僕も手伝うよ」
『あ、デントさん!』
「あれ…ナマエ?」
…――厨房に立って居たのはコーンではなく、デントの恋人であるナマエだった。
基本的に店は三つ子三人で回すのだが、今日のように忙しい時は、こうやってナマエが手伝いに来てくれる。本当に有難い事だ。
「コーンは?」
『コーンさんはゴミを出しに行きましたよ』
「そっか…あ、僕も手伝うよ」
『あ、有難う…』
「ううん、こんなに沢山の食器をナマエ一人に洗わせるのは可哀相だからね」
デントの気遣いと優しさに、ナマエの頬は徐々にピンク色へと染まってゆく。
『そ、それにしても今日は忙しかったですね!』
「本当にね、僕も驚いたよ。でも、ナマエが来てくれたから助かったよ」
『ううん、私が好きで勝手に手伝いに来てるだけだから…!』
「…有難う、ナマエ」
ナマエは本当に優しい子だ。僕と付き合う前から周りを気遣う、とても優しい子だった。そんなナマエに僕は一目惚れし、今では僕の想いも伝わり恋人同士に。
ナマエの優しさも含め、ナマエの全てを独占出来る僕は本当に幸せ者だと思う――…否、幸せ者だ。
「ナマエ、今日は泊まっていきなよ」
『え…!』
「もう、外も暗いし…女の子独りで街を歩くのは危険だから…ね?」
『で、でも…』
「良いから、僕がナマエに泊まっていって欲しいんだ…」
『……ッ、』
最初は遠慮がちだったナマエも僕がお願いをすれば、恥ずかしそうにしながらもコクンと首を縦に振った。嗚呼、なんて可愛いんだ…。
「ナマエを見てると癒されるよ」
『へ…?』
「だって、ナマエってば可愛過ぎるから」
『そ、そんなこと…んむ!』
僕は咄嗟にナマエの唇に人差し指を当てた。ナマエの唇はぷにゅっとしていて、柔らかいし気持ちが良い。
「そんなことない、なんて言わせないよ?」
『・・・ッ、』
言葉を紡ぐ事が出来なくなったナマエは顔を真っ赤にしながら、ただひたすら視線を彷徨わせている。またこれもナマエの可愛いところ。
ナマエを見ていると本当に癒される。どんなに疲れていても、ナマエが僕の視界に入るだけで疲れが一気に吹っ飛んでしまう。それだけ、ナマエの存在が僕の中で大きいという事だ。
「さぁ、早く片付けてしまおう」
『う、うん…!』
君が居てくれるから僕は頑張れる。これからも、君の為に頑張り続けるよ。
君 の 存 在
(僕達の素敵な未来の為に――…)
--END--
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