『うぅ、本当にこれで大丈夫かなぁ…』
部屋の鏡の前で自分の姿を凝視するナマエ。その恰好は今年買ったばかりの水着姿だった。爽やかなライトグリーンと白のストライプ。先日、デントからプールに行こうと誘われた為に水着を新調したのだ。
『水着なんて今まで着る機会無かったから見せるのが何だか怖い…』
約束は明日。前日のチェックは念入りにしておかねば、と水着を着用した時の姿のチェック、持ち物のチェックの最終確認をしていた。
(デント君が気に入ってくれると良いんだけど…)
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…――翌朝。
「おーい、ナマエー!」
待ち合わせ場所であるライモンシティのギアステーション前には既にデントの姿があった。
『デント君、遅くなってごめんなさい…!』
「ううん、時間ピッタリだよ」
『良かった、先に居たから遅れちゃったのかと…』
「レディより遅れて来るなんて失礼じゃないかなって思ってね」
『デント君らしい』
「それじゃ、行こっか」
『はい!』
デントはナマエの手を取ると指先を絡め合う様に手を繋いだ。恋人繋という繋ぎ方だ。
普段のウェイター姿とは違い、夏らしい涼し気な恰好をしているデントに少しだけ、ときめいてしまうナマエ。
「それにしても暑いね」
『午前中でこんなに日差しが強いとお昼になったらもっと暑くなっちゃうんだろうなぁ』
「屋内プールもあるみたいだから、暑過ぎる様だったら移動しても良いかもね」
『屋内にもあるんだ…!』
ライモンシティに夏季限定で開放されているプール。二人とも此処に来るのは初めてだ。なるべく日陰になっている場所を歩きながら目的地へと向かう。暫く歩き続けていると大きな施設が見えてきた。子供や大人問わず楽しくはしゃいでいる声が聴こえてきた。
「此処だね」
『期間限定の割には大きいね…』
「流石はライモンシティってとこだね。さぁ、中に入ろう」
こんなに大きなプール施設は初めてだと、外観を見上げながらデントと共に施設内へ進んだ。
受付が済めば、此処からは一旦男女別行動となる。
「それじゃ、着替えてから合流しよう」
『はい、また後で』
それぞれ別の更衣室に向かうデントとナマエ。ナマエは更衣室に入ると空いたロッカーを探し始めた。
(…――あ、此処空いてる)
なるべく隅のロッカーを選ぶと、デントを待たせてはいけまいと早めに着替えていく。昨晩、散々チェックはしたものの不安は募る。もう一度鏡の前でおかしな点がないかと確認してから更衣室を出るナマエ。
『デント君、お待たせ…!』
「ううん、僕も今着替え終えたところで――…」
小走りでデントの元へ駆け付けるナマエ。先に待って居たデントは此方を見るなり言葉が止まってしまった。
『変、じゃない…かな?』
初めてデントに見せる水着姿。勿論、ナマエがデントの水着姿を見るのも初めてである。
「凄く可愛いよ。でも、あんまり見てられないな…」
『え…?』
「好きな女の子の水着姿なんてずっと見てたら…その、我慢出来なくなるから…」
デントの言葉にカァ、と顔を紅潮させるナマエ。
『デント君ってば…!』
「ご、ごめん…」
『でも…』
「ん?」
『我慢、出来なくなるの分かるかも…。デント君の水着姿も恰好良くてドキドキしちゃって…ずっとは見てられない…』
「あ、ありがとう。何だか照れるな」
お互いにドキドキと高鳴る心臓を落ち着かせようと深呼吸をする二人。
「よし、それじゃあ楽しもうか」
『はい…!』
デントとナマエは施設に設けられた流水プールやスライダー等、様々なアトラクションプール等を愉しんだ。お昼は併設してあるレストランで昼食を摂り、売店を見つければ限定のソフトクリームやフィズ等を二人で分け合ったりもした。
*****
『今日はありがとう!』
「僕の方こそ、凄く楽しかったよ」
『こんなに大きなプール初めてで…』
「また来年もあれば来たいね」
『来年…』
「どうかした?」
来年、という言葉に嬉しさが込み上げてきた。また来年も一緒にデント君と居られるんだ、と思うと嬉しくて幸せな気持ちになれた。
『来年もまた来たい…』
「僕もだよ」
『来年も、再来年も…ずっとデント君の隣で思い出を作りたいから』
「ナマエ…うん、そうだね。僕たちの思い出を沢山作ろう」
オレンジ色の夕日がデントとナマエを眩しいくらいに照らす。ギアステーションで別れる間際、離れていた二人の影がゆっくりとひとつに重なった。
「ずっと一緒だよ、ナマエ」
-END--
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