扉の向こうから聴こえてくる声。声の主はセリスの私兵。こんな朝早くからケフカを呼び出すとは何事なのかとナマエは眉を顰めた。





師 と 私 と 





『あの、おはようございます…』



扉をゆっくりと開けばギィ…、と木が軋む音が響き渡る。



「これはナマエ様、おはようございます。ケフカ様はお目覚めですか?」

『え、ええ…起きてはいますが…』



チラリ、と視線だけをケフカが未だに居る寝室の方へ向けるナマエ。きっと今呼べば不機嫌になるのではと頭に過ぎる。



『あの、セリス将軍がお呼びなんですよね?』

「はい、左様です」

『ケフカ様には私から伝えておきますので…』

「そうですか?では、お願いします。お越しになられる際はナマエ様もご同行願います」

『私も、ですか?』

「ええ、それでは失礼します」



そう言って、セリスの私兵は用件のみを伝え戻って行った。ケフカとセットで呼び出されるとは何事だろうか。疑問に思いながら、ナマエは音を立てないように扉を閉めた。



「誰が来てたんですか?」

『あ、ケフカ様。その、セリス将軍がお呼びで…』

「セリスが?」

『はい、私も一緒に来るよう言われました。あ、直ぐに紅茶を淹れますね』



扉の戸から手を離し、急いで紅茶の準備を始めるナマエ。そんなナマエを横目で見遣りつつ、ケフカは執務机の椅子に腰を下ろした。



「用があるなら自分から来りゃ良いのにねぇ、」

『きっと多忙なんですよ』

「ぼくちんだって暇じゃないんですよ?毎日忙しいんだから〜」

『ふふ、そうですね』



嘘だと分かっていても否定はしない。ナマエはケフカの言葉に耳を傾けながら、ポットに淹れた紅茶をティーカップに注いだ。



『お待たせしました、ケフカ様。ミルクティーをお淹れしました』



音を立てないように、そっとケフカの前にティーカップを置いた。淹れたばかりの紅茶からはもやもやと湯気が立っている。



「はーい、ありがと」

『それにしても私も一緒にとは一体何なのでしょうか…』

「どうせ、くっだらないお喋りでもするんでしょ」



面倒だという表情を浮かべながら、ティーカップを口に運ぶケフカ。一口喉に通すと、ハァ…と溜め息をひとつ吐いた。



『ケフカ様?』

「面倒な事にならなきゃ良いけど、」

『…そ、そうですね』

「ま、面倒な事は引き受けなきゃ良いだけ。断っちゃえば良いんですよ」

『うーん…』

「さて、気は進まないけど行きますかね」

『は、はい』




残りのミルクティーを数回に分けて飲み干すと、ケフカは椅子から腰を上げナマエの手を引き部屋を後にした。




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