『デント兄ちゃん、これはなぁに?』

「ん?これはモモンの実だよ」

『モモンの実?美味しいの?』

「そのまま食べても甘くて美味しいけど、ちゃんと調理すればもっと美味しく食べられるよ」

『へぇ、そうなんだ!ナマエ、デント兄ちゃんの作る料理大好き!』

「あはは、ありがとう」

『あ!デント兄ちゃんの事も大好きだよ!』








――――――…


――――…


――…






「ん…何だ、夢か…」



数年前の過去を夢で見るなんてな…。

まだナマエが十歳くらいで僕は十四歳くらいだったかな、ナマエとは幼馴染で物心着いた頃から傍に居て…嗚呼、何だか懐かしいな。

よく、近くの草村に行っては野草を摘んだり、散歩に行ったりしたんだっけ…。



「本当、懐かしいな…」



夢の中で小さかったナマエも今では夢の頃より随分大人になって"可愛い"というより"美人"という言葉の方が似合う女性になってしまった。

こうして振り返ってみると、時が経つのは何て早いんだろう…。



「ヤーナァ…」

「あ…おはよう、ヤナップ」

「ナップ」



過去の思い出に浸っていると、隣で寝ていたヤナップが目を覚ました。また、それと同時にタイミング良く"コンコン"と部屋の扉をノックする音が室内に響いた。



『デント、朝だよー?』



掛け声と共に"ガチャリ"と開かれた扉の向こう側には愛しい人の姿。思わず、僕はニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべてしまった。



『うわ、デントってば気持ち悪い!何笑ってんのよ?』

「いや…何でもないよ、クスクス」

『そう…?あ、それより朝御飯出来てるよ?』

「うん、分かった。着替えたら直ぐに行くよ」

『はーい、待ってるね』

「あ、ナマエ…」

『うん?』





…――そう、過去が在るからこそ今の僕達が在るんだ…。





「おはよう」







過 去 と 未 来







(そんなナマエも今では僕の愛しい愛しい奥さんなんだ…)





--END--

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