『あの、ケフカ様…』
「んー?どしたの、ナマエちゃん」
もじもじと何かを聞きたげな様子で人差し指をつんつんを合わせる仕草を見せるケフカの使用人、ナマエ。ナマエの事がお気に入りであるケフカは相変わらず大きなソファーで足を組んで寛いでいた。
『その…ずっと気なっていた事がありまして、』
「気になってた事?なーに?」
チラチラとケフカの顔に視線を向けながら、ゆっくりとケフカに歩み寄る。
「言ってごらーん?」
『ケフカ様の、その…尖ったお耳って本物なんでしょうか…?』
元は人間だったケフカ。帝国の魔道実験後からなのか、普通の人間には見られない独特の尖った耳。
ケフカは何を尋ねられるのかと思いきや、自身の耳の事とは思わず一瞬間の抜けた表情を浮かべた。
『も、申し訳ありません!変な事を聞いてしまって…!』
ケフカの表情を見るなり、不味い事を聞いてしまったのかと慌てるナマエ。
『あ、あの…聞かなかった事にして下さい…!わ、私…お、お茶を淹れて参ります…!』
一度、この場を立ち去ろうとするナマエの腕をケフカがやんわりと掴み立ち止まらせた。振り返えるとケフカは普段のニンマリとした妖笑を浮かべている。
「触ってみる〜?」
『え…、』
思いも寄らぬケフカの提案に返事に困ってしまうナマエ。
「気になるんでしょう?ぼくちんの耳が本物なのかどうか、」
『は、はい…それはそうなんですが…』
「いーよ、ナマエちゃんにだけ特別に触らせてあげる」
そう言って、ケフカは掴んでいたナマエの手元を自身の耳元に寄せる。
『あ…、』
恐る恐る、その尖った耳に触れるナマエ。少し冷たいけれど、それは確かに人の温もりが感じられた。
『本物、でした…』
「…そんな風に触られると擽ったいねぇ」
『す、すみません!』
「謝る事はないですよ。ナマエちゃんに触って貰えて、ぼくちん最高の気分だから」
『ケフカ様…、』
ふにふに、と尖った部分に触れる指先がケフカにとって心地良い様子。
「ナマエちゃん、」
『はい…?』
「ぼくちんに触れたかったら遠慮なく触れて良いんですよ」
『そ、そんな触れたいだなんて…!』
「ぼくちんもナマエちゃんに触れたいし、ナマエちゃんに触れられたいからねぇ」
触れたい、触れられたい、ケフカのその言葉に思わず息を呑むナマエ。どのような言葉で返事をして良いか分からず、取り敢えず首を縦に頷かせる。
「ナマエちゃんは、ぼくちんのお気に入りだから」
『ケフカ様、ありがとうございます…』
「さ、お茶にしよっか」
『はい…!』
あ な た に、
(…――もっと、触れてみたい)
--END--
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