四人でのティータイムを終え、ナマエは一旦自分の部屋に戻っていた。戻る際にデントからポケモン用のデザートフードをポッチャマに、と渡されていた。
君 を 護 る た め に
『ポッチャマ、出ておいで』
モンスターボールから赤い閃光が放たれると、元気いっぱいのポッチャマの姿が現れた。
「ポチャ!」
『ポッチャマ、デントさんからポッチャマにどうぞって』
「ポチャー?」
ナマエはデントから貰った包みをポッチャマに差し出す。中身を見せられ、甘い香りが漂うとポッチャマの大きな瞳はキラキラと輝いていた。
「ポ、ポチャチャ!?」
『ポケモン用のお菓子なんだって。良かったね、ポッチャマ』
「ポチャー!」
ポッチャマは小さな翼で包み中のそれを取り出すと、嘴を大きく開け放り入れた。口の中に広がる蜂蜜の様な甘さに頬っぺたが落ちそうな勢いのポッチャマ。言葉にならない声を出しながら二口、三口と手が進む。
『凄く美味しいみたいだね。後でデントさんにお礼言うんだよ?』
「ポチャ!」
モグモグと頬張りながら、ポッチャマは大きく縦に頷いた。ナマエはよしよし、とポッチャマの真ん丸な頭を撫でながら夢中で頬張る姿を眺めた。
『本当にデントさんは何でも出来ちゃうんだなぁ…』
このデザートフードもデントのお手製だろう。そう思うとデントの様に何でも熟せる訳ではない自分が少しだけ情けなく感じるナマエだった。
そんな事を考えながら、ベッドの方に視線を向け枕元に置いてあるタマゴを何の気なしに見つめた。
『あ、れ…?』
気の所為だろうか、タマゴが一瞬だけ揺れた様に見えたナマエ。気になったナマエは枕元に近付きタマゴを持ち上げた。すると、ナマエを待っていたかの様にタマゴにパキパキとヒビが入り始めた。
『え!嘘!?ポッチャマ!どうしよう、タマゴがッ!』
「ポ、ポチャチャ!?」
ナマエの声にポッチャマも慌ててベッドに飛び乗り、タマゴを見つめた。ヒビはどんどん広がっている。
『う、産まれるんだよね…!?わわ、どうしよう、デントさん居ないし…ッ』
突然の出来事に慌てふためくナマエ。兎に角、産まれるのは間違いないと確信したナマエはそっとタマゴをベッドの上に置き見守る事にした。
どんなポケモンが産まれるかは、産まれてからの楽しみにと伏せられていた為に期待が高まる。いつの間にかナマエの手元は祈る様に両手が組み合わされていた。
『無事に産まれますように…』
小さな声でタマゴに向かって言葉を紡ぐと、ヒビが入るスピードが早まりタマゴから眩しい光が放たれた。
『…――きゃ!』
「ポチャー!」
放たれた光の眩しさに目を瞑るナマエとポッチャマ。光が収まれば、少し緊張しながらもゆっくりと瞼を開いた。
「クリュ〜…」
ベッド上にちょこんと立つ葉っぱの様なポケモン。ナマエとポッチャマは暫く無言のまま見つめた。
『…――か、』
「ポチャ?」
暫しの沈黙から漸く口を開いたナマエ。
『可愛い!』
「クリュリュ?」
ナマエは頭に葉っぱを纏う虫の様なその身体を抱き上げ、胸元でギュッと抱き締めた。
『ポッチャマ、この子の名前って何だろう?初めて見るから分からないけど、とっても可愛い!目とかポッチャマみたいに大きくて丸くて!』
「ポチャポチャ?」
ポッチャマも初めて見るポケモンに不思議そうな表情を浮かべていた。自分に似ているのか?と思っている様な、そんな表情にも見える。
『無事に産まれて良かった。あ、私はナマエって言うの。あなたが産まれるの楽しみにしてたんだよ』
「クリュ〜!」
孵ったばかりのそのポケモンはナマエの名を聞き、自分が産まれる事を楽しみにしていたと知れば、嬉しそうに頬を擦り寄せた。
『喜んでるのかな?私もすっごく嬉しいよ。あ、そうだ!デントさんに知らせなきゃ!おいで、ポッチャマ!』
ナマエはポケモンを抱き締めたまま、ポッチャマを連れ慌てて部屋を飛び出しデントの元へ向かった。
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