「おー!ナマエちゃん、めっちゃ可愛いじゃねぇか!」
「ナマエさん、とてもお似合いですよ」
翌日、利用客が居ない店のホールで、デントから贈られた新しい服をコーンとポッドにも披露するナマエ。その表情は何処か照れ臭そうだ。
『あ、ありがとうございます…!』
「しかし、よくサイズが分かりましたね」
『私も驚きました…』
「ふふ、これくらい簡単さ」
嬉しそうに新しい服に身を包むナマエの姿を見つめながら微笑んでみせるデントに、コーンはやれやれと言わんばかりの表情を見せた。
「まぁ、デントの見立ても中々のモンだけどよ、情熱的な赤ってのもアリなんじゃねぇの?」
『赤、ですか?似合いますかねぇ…』
「ナマエさんならどんな色でも似合うよ。でも僕はその色が好きだから」
『ありがとうございます、デントさん。私もこの色、大好きですよ』
「…ちぇ。入る余地ねぇな、こりゃ」
ヒラヒラと手を振っては二人から距離を取り、壁に凭れ掛かるポッド。そんなポッドの肩にポン、と置かれるコーンの手。ポッドが視線を向ければ、コーンは緩りと首を横に振り、小さく笑みを浮かべた。
「な、何だよ…?」
「幸せそうですよね、あの二人」
「そう、だな…」
「大丈夫、デントなら上手くやっていけますよ」
「ああ、」
(…――相当惚れ込んでたんだな、俺…)
ポッドとコーンが壁際から二人を眺めていると、それに気付いたナマエが不思議そうな顔をした。
『二人共、どうしました?』
「ん?何もねぇよ?」
「ポッドはデントに嫉妬してるんですよ」
「ばっ、何言ってんだよ!コーン!」
『嫉妬?』
何故に嫉妬しているのか、更に不思議がるナマエ。
「ハイハイ、そこまで。小腹も空いたしティータイムにしよう」
そう言って、デントはキッチンに立ちティータイムの準備を始めた。何か手伝う事は無いのかと、ナマエがデントに駆け寄る。
『デントさん、私も何か手伝います』
「本当かい?ありがとう、それじゃあ冷蔵庫にケーキが入ってるから、好きなケーキを選んで用意してくれるかな」
『分かりました!』
デントに指示を貰えば言われた通りに冷蔵庫へ向かうナマエ。その間にデントはポットに水を張り、湯を沸かす。茶葉は何にしようか少し悩んだが、ジャスミンを選んだ。
「コーン、ポッド、此処は僕達が準備しておくから席で待っていて」
「そうですか?デントがそう言うなら、」
「じゃあ、頼んだぜ。あ、ナマエちゃん!俺、ヒメリのタルトな!」
『ヒメリのタルト!美味しそうですね、分かりました!』
冷蔵庫の中からヒメリのタルトを探すナマエ。幾つか用意されていたケーキの中から、これだろうとタルトの乗った皿を取り出した。慎重にナイフで一人前をカットし、皿に盛る。
『切るのって案外難しいんですね』
「慣れるとね、綺麗にカット出来るようになるよ。ナマエさんは何のケーキにしたの?」
『私はミルフィーユにしました!デントさんはどうしましょう?』
「僕もナマエさんと同じ物で」
デントはニコリと微笑みながら、トレイに四人分のティーカップと淹れたばかりジャスミンティーが入ったポットを乗せて席へ向かった。
ナマエも慣れない手つきでケーキを準備し、デントの後を追った。
君 を 護 る た め に
『お待たせしました!』
「お、上手にカット出来てるじゃん!」
「ナマエさん、器用そうですしね」
『あ、ありがとう…』
普段やらない事を褒められ、照れ笑いを浮かべるナマエ。ケーキの乗ったお皿を各々の場所に置いてからデントの隣に腰を落ち着かせた。
デントが淹れたジャスミンティー。ジャスミン独特の花の香りにナマエは心癒された。
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