翌の早朝、強い風の音で目が覚めたナマエ。ガタガタと揺れる窓枠が目に付けば、隣で眠るケフカを起こさぬようにゆっくり寝台から下りる。

カーテンの隙間から外を覗くと、嵐にも近い横殴りの雨が窓ガラスを打ち付けていた。風も強く荒れている。



『凄い雨…』



時折鳴り響く落雷の音が耳障りで仕方なかった。落雷の音でケフカが起きやしまいかと、ケフカを見遣ったがケフカはスヤスヤと寝息を立てており、その心配は無用だった。



『良かった、ちゃんと寝てる…』



ナマエはカーテンの隙間をしっかり閉めると、再びケフカの眠る寝台にそっと腰を下ろす。一度起きてしまえば目も冴えてしまい再び眠るのは難しかった故にケフカが起きるまでの間、寝台に座ったままケフカに寄り添う事にした。







――――――……



――――…



―――…





「ん…、」



あれから二時間程経っただろうか、眠っていたケフカが目を覚ました。



『おはようございます、ケフカ様』

「ふぁ…――おや、先に起きてたんですか?」

『はい、風の音で目が覚めてしまって』

「ナマエは音に敏感だねぇ、ぼくちん全然気付かなかったじょ」

『ぐっすり眠られてましたね』



ナマエは寝台から腰を上げると、ケフカの象徴でもある派手な衣装をクローゼットから用意しケフカの前に差し出した。



『先に着替えられますか?』

「ンー、ナマエが着せてくれるんです?」

『…え、』

「フヒヒッ、冗談ですよ。服くらい自分で着替えます」



ケフカの言葉に顔を赤らめるナマエ。また揶揄われたのだと分かれば更に赤みは増した。慌てて顔を伏せては熱く滾る顔をケフカに見せまいと隠す。



「イイねぇ、その反応」

『…――ッ、』



ヒョッヒョッ、と満足そうに笑いながら差し出された服を受け取るケフカ。ナマエは熱くなった頬を冷やすかのように手で押さえる。



「ヒッヒッ、一緒にお風呂で脱ぎ合いっこしたのにねぇ」

『も、もう!思い出させないで下さい…!』

「どうして〜?」

『…恥ずかしくて、ケフカ様と…目が合わせられなくなります…から、』

「ハイハイ、じゃあぼくちん着替えるから温かい飲み物でも用意してくれる?」

『わ、分かりました』



顔を伏せたまま扉のノブに手を掛け、ケフカの寝室を後にするナマエ。ケフカはその後ろ姿をニンマリとした笑みを浮かべながら目で追った。





師 と 私 と 





寝室から出ては後ろ手に扉を閉めるナマエ。そのまま扉に寄りかかれば、ハァー…と大きく息を吐いた。



『心臓が破裂しそう…』



自分でも止める事の出来ない胸の高鳴り。愛されている事が分かっている故に…。


ドキドキと煩い胸の鼓動を落ち着かせようと深呼吸していると、コンコンとケフカの部屋の扉をノックする音が響いた。



「…――ケフカ様、セリス将軍がお呼びです」



扉の向こうから聴こえてきたのはセリスの私兵だった。




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