『お、お邪魔しまーす…』



静かにデントの部屋の扉を開けるナマエ。デントの部屋を訪れるのはこれで何度目だろうか。



(タマゴ、何処だろう…)



ナマエはタマゴを見つけるべく、室内をキョロキョロと見渡した。











『あ――…!』



探していたタマゴは案外早く見つかり、ナマエはホッと胸を撫で下ろし安堵した。



『ベッドの上に置いてたんだ。良かった、直ぐに見つかって…』



ナマエはベッドの上に置いてあるタマゴをそっと胸元に抱き抱えた。微かではあるが、これから産まれてくるポケモンの鼓動が胸に伝ってくる気がした。



『きっと、もうすぐだね…』



タマゴに向って優しく声を掛けるナマエ。



(どんなポケモンが産まれてくるかは分からないけど、どんなポケモンでも大切にするからね…)



ナマエはタマゴの天辺を愛おしそうに何度も何度も優しく撫でた。



『早く産まれておいでー…なんちゃって、』



それからナマエはデントが帰るまで、タマゴを愛で続けた。







* * * * *




あれから数時間が経ち、窓の外を見ると陽も落ちていて辺りは既に暗くなっていた。時計を確認すれば、指針は午後七時を差している。



『わぁ、もうこんな時間に…デントさん遅いなぁ…』



(一体、何処まで行ったんだろう…?)







…―――ガチャ、




『…――!』

「あ、やっぱり僕の部屋に居たんだね」

『デントさん…!』

「ナマエさんの部屋、明かりが点いてなかったから、もしかして…と思ってさ」

『か、勝手に入ってしまってゴメンなさい!』

「ううん、全然問題ないよ。その様子じゃタマゴの面倒見てたみたいだね」

『あ、はい…』



突然帰って来たデントのペースに呑み込まれるナマエ。



『あ、あの…えと…』

「ん?どうしたの?」

『えーと、えーと…』



何処から話しを進めて良いのか分からなくなってしまっているナマエを見て、デントは可笑しく思ったのはクスクスと笑いを零す。



「クス、」

『な、何で笑うんですか!』

「あはは…ゴメンゴメン。何だか可愛いなーって…」

『何処が…ッ』

「まぁ、いつも可愛いんだけどね」



ナマエはデントの一言で一気に顔を茹で上がらせた。



『もう、デントさんってば!』

「僕は何も悪い事なんて言ってないんだけどなぁ」

『…――ッ、』

「あ、そうだ」

『・・・?』



デントは何かを思い出したのか、手元に抱えていた紙袋をナマエに差し出した。



「はい、新しい服だよ」

『わ…、』

「サイズは多分大丈夫だと思う」

『ほ、本当ですか?もし入らなかったら…』

「大丈夫だよ。ほら、着てみてごらんよ」

『え、まさか…此処で?』

「あれ、ダメだった?」

『デ、デントさんのエッチ!』

「あはは、冗談だって」




(まぁ、本当は冗談なんかじゃないんだけどね…)




「じゃあさ、僕は後ろを向いてるから、その間に着替えるってのはどうかな?」

『…こっち、絶対に向きませんか?』

「大丈夫だよ。心配なら、ヤナップに見張って貰うからさ」

『そ、それなら…』



ヤナップにデントを見張らせる提案に頷くナマエ。ナマエがデントの提案を呑むと、デントはモンスターボールからヤナップを繰り出した。



「おいで、ヤナップ!」

「…――ヤナッ!」

「話は聞こえてたよね?」

「ヤナヤナ!」

「じゃあ、ヤナップは僕の見張り役って事で頼むよ」

「ヤナ!」

『ヤナップ、お願いね?』



デントはヤナップを自身の見張りに付けるとナマエに背を向けた。



『き、着替えますからね…!絶対見ちゃ駄目ですよ!』




ナマエはデントが背を向けた事を確認すると、いそいそと身に着けていた服を脱ぎ、デントから貰った服を紙袋から取出し着替え始めた。






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