『新しい服かぁ…』
デントさん、一体どんな服を用意してくれるんだろう…?今、思い返して見れば新しい服なんて何年振りかな…?私的にお気に入りの服なんて二、三着あれば充分だし…。
『うーん、ちゃんと似合うと良いんだけど…』
…――そういえば、デントさん…私のサイズ、知ってるのかな?
君 を 護 る た め に
…―――コンコン
なんて頭の中を疑問一杯にしていると、突如部屋をノックする音が室内に響いた。
『あ、はーい!あ…ッ、少し待って下さい…!』
ナマエは慌ててパジャマに着替えながら返事を返す。
「ゴメン、ナマエちゃん…俺だ、」
『え、と…その声はポッド君…?』
部屋を訪れた声の主はポッドだった。先程の出来事もあってなのか、ナマエの顔が一気に赤面する。扉を開けようとしていた手も次第にドアノブから遠ざかってしまう。
「あの、さ…さっきは悪ィ…その、何も知らなくてさ…」
『う、うん…』
(ど、どうしよう…さっきの事がまだ頭に残って――…)
「俺、鈍いからさ…コーンに言われて初めて知ってよ…だから謝りに来たんだ、」
『ポッド君…』
「本当にゴメンな…」
そっか、そうだよね…ポッド君も知っててあんな事したんじゃないんだもんね…。
『ううん、私の方こそ失礼なこと言ってしまってゴメンなさい…』
そう告げると、ナマエは遠ざかっていたドアノブに再び手を掛け、ゆっくりと扉を開けた。
「ナマエちゃん、その格好…」
『えへへ、服が破れちゃったからね』
「え、着替えは?」
『それが、その…お恥ずかしい事に持ち合わせてなくて…』
「マジかよ、」
『あ、でも!今、デントさんが新しい服を準備してくれてるので大丈夫ですよ!』
「デントが?」
『はい。デントさんが、です』
「へぇ…アイツがねぇ?こりゃ、相当惚れてんな」
『え?今、何か言いました?』
「あー…いや、何でもねぇよ」
(デントの奴、好きな子の為なら何でする性格だな。まぁ、俺も人のこと言えた義理じゃねぇけどな…。きっと、俺もデントの立場だったなら同じ事してるだろうし…)
「まぁ、取り敢えずはきちんと謝れて良かったぜ!その様子じゃ、許して貰えたみてぇだしな」
『はい、もう全然怒ってませんよ』
「ありがとな?んじゃ、俺はこれで」
『お部屋、入らないんですか?』
「おう、デントの機嫌損ねたくねぇしな」
『き、機嫌って…』
(うーん、ポッド君相手だったらデントさんの機嫌悪くなっちゃうのかな…?)
「新しい服、ちゃんと見せてくれよな?」
『はい、』
「んじゃ!」
ポッドはニッと白い歯を見せるように笑みを浮かべた後、ナマエの部屋を後にした。ポッドの姿が見えなくなると同時に静かに扉を閉めるナマエ。
『あ、そういえば…』
扉を閉めた後、ナマエは何かを思い出した様子でキョロキョロと周囲を見渡し始めた。
『やっぱり、タマゴがない――…ってことはデントさんの部屋に置いたままなのかな』
サンヨウジムを飛び出す前、デントの部屋に忘れて来てしまったタマゴ。その存在をすっかり忘れてしまっていた事に気付くと、ナマエは自らの部屋を出ては隣のデントの部屋へと向った。
(デントさんの部屋、勝手に入っちゃダメ…だよね。でも、タマゴが心配だし…)
タマゴの事が心配で堪らなかったナマエは、扉の前で一度深呼吸をしてからドアノブをゆっくり回した。
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