『き、緊張するなぁ…デントは緊張してない?』

「ふふ、僕も緊張してるよ」

『その割には平気そうな顔だなぁ…』



真っ白なタキシードを身に纏うデント。そして、同じように純白の華やかなドレスを身に纏うナマエ。今日はデントとナマエ、二人の結婚式。


挙式が始まるまで未だ時間がある。本来なら新郎新婦別々での待機なのだが、ナマエに呼ばれたデントは新婦の控え室に赴いていた。緊張が解けないナマエは先程から何度も深呼吸をしたり、手に人の字を書いては飲み込む素振りを見せている。



『転んだりしませんように、指輪を落としたりしませんように…!』

「そんなに心配しなくても大丈夫さ。ナマエなら上手くやれるから、ね?」

『う、うん…頑張り、ます』

「じゃあ、僕からもおまじない」



…――ちゅ、



『デ、デント…!』



額に落とされるデントからの口付け。柔らかなデントの唇が触れれば、驚いたように顔を上げるナマエ。



「これで大丈夫」

『も、もう…!始まる前に変にドキドキしちゃう…』

「良い刺激になっただろう?」



口付けされた額を軽く押さえながら顔を赤らめるナマエに、デントはクスクス、と笑みを零しながら何処か愉しそうな様子。



「さぁ、僕はそろそろ戻るよ」

『え、もう…?』

「うん、コーンとポッドが待ってるからね。それに綺麗な花嫁姿も目に焼き付けた事だし」

『そ、そっか』



新郎の控え室に戻ろうとするデントに、ナマエは淋しくなってしまう気持ちを抑えられず、しゅん、と少しばかり顔を俯かせる。そんなナマエの手を握り締めては言の葉を紡ぐデント。



「ナマエ、」

『…ん、』

「次に会う時は本当の意味で僕のお嫁さんだよ。もう一生離さないし、離れない」

『デント…』



デントの言葉に小さく頷くナマエ。



『私もデントから離れないし、離したくない。デントのこと大好きだから…ううん、愛してるから!』

「ありがとう、ナマエ。僕もナマエのこと愛してるよ」

『えへへ、何だか照れ臭いね。それともう大丈夫、デントのお陰で緊張が解けちゃったみたい』

「それは良かった。それじゃあ僕は戻るね」

『うん、ありがとう』



ひらり、と手を軽く振っては控え室へ戻るデント。デントが部屋を出て暫くすれば、挙式が始まると声が掛かる。先程まで緊張していたナマエだったが、今では緊張も解け穏やかな表情だった。



『よし、旦那様が待ってるから行かなくちゃね』



ナマエはコツコツ、とヒールの踵を鳴らしながらデントが待つであろう教会へ歩み出した。




マ リ ア ー ジ ュ




…――私達二人は、

病める時も、健やかなる時も、

富める時も、貧しき時も、

一生涯お互いを敬い、慈しみ、

愛する事を誓います。



-END--

back



×
- ナノ -