洞窟を出ると洞窟に入るまで降っていた大雨はすっかり止んでおり、暖かい日差しが洞窟から出たばかりのデントとナマエを照らしていた。
ちなみにポッチャマはというと"疲れた"を理由に自らモンスターボールの中へ戻っていってしまった。
『うわ、あんなに降ってたのに…』
「本当だ、」
『晴れて良かったですね』
「うん。あ、そうだ…」
『・・・?』
デントは何かを思い付いたようにナマエに視線を向けた。そんなデントに何だろう?と不思議そうにナマエが首を傾げているとナマエの手にコツンと何かが当たる。
手元に視線を落とすと、そこにはナマエより一回り大きいデントの手。デントは"手を繋いで帰ろう"という意味で手を当てたようだ。
『デ、デントさん…?』
「手、繋いで帰ろうよ」
『・・・ッ!』
「嫌、かな…?」
『そ、そんな事ないです…!』
ナマエは慌てて返事を返すと自分の手に当てられていたデントの手をそっと握る。すると、それに応えるかのようにデントもナマエの手を握り返した。
『デントさんの手、温かい…』
「ナマエさんの手も温かいよ」
デントとナマエはしっかりと互いの手を握ったまま、コーンとポッドが待つサンヨウシティを目指して歩み始めた。
*****
「遅ぇなぁ…」
一方、サンヨウジムでは、なかなか帰って来ないデントとナマエに不安と心配から募る苛立ちを隠せないポッドが扉の外でウロウロと左右行ったり来たりを繰り返していた。ポッドの直ぐ後ろには壁に背を預け、デントとナマエの帰りを待つコーンの姿があった。
「ポッド、少しは落ち着いて下さい」
「これが落ち着いてられっかよ!」
「ポッドが焦っても状況が変わるわけではないんですよ?」
「そんな事くらい俺だって分かってる!分かってるけどよぉ…」
「ならば、もう少し落ち着いて…――あ、」
「な、何だよ…?」
「ポッド、後ろ…」
「は?後ろ?」
突然、目を見開くコーンに後ろを向くよう指示されたポッドは若干面倒臭そうにしながら背後を振り返る。
「あ――…ッ!」
振り返った先には漸くサンヨウジムへ戻ってきたデントとナマエの姿があった。デントとナマエの手は今だにしっかりと繋がったままだ。
「ただいま、二人共」
『ご心配お掛けして申し訳ありませんでした…』
デントと手を繋いだまま、深々と頭を下げて詫びるナマエの姿にコーンとポッドは少し戸惑いながらもナマエの頭を上げさせた。
「ナマエさんが謝る事はありません。悪いのはコーン達なのですから…」
「俺が興奮しちまったのも原因だしさ……だから、ナマエちゃんが謝る事はねぇよ」
『コーンさん、ポッド君…』
「それより、お帰りなさい。デントとナマエさんが無事に帰って来て本当に良かったです…」
「あんまりにも帰りが遅ぇから、俺も探しに行こうか迷っちまったぜ」
「さぁ、二人共お腹が空いているんじゃありませんか?温かい料理を用意していますので、中に入って召し上がって下さい」
「腕によりを掛けて作ったンだぜ!」
コーンとポッドの温かい心遣いに、ナマエの瞳には大粒の涙が浮かべられた。
『有難う、三人共…ッ』
「何を今更…ほら、泣かないで下さい?」
「泣いた顔も可愛いよね」
「あぁ、それは同感」
「ちょっと二人共…こんな時に冗談言わないで下さいよ…」
「冗談じゃないんだけどな」
そう言いながら、デントはポケットからハンカチを取り出すとナマエの涙をそっと拭い上げる。
『ん…有難う、デントさん』
涙を拭って貰ったナマエの顔は微笑みで埋め尽くされていた。
「さぁ、中に入ろうか」
『はい』
デントに手を引かれたナマエはデントの手をしっかり握り締めたまま、再びサンヨウジムの扉を潜るのであった。
君 を 護 る た め に
「結局、あの二人…くっ付いたみたいですね」
「みてぇだな。しっかり手も繋いでたし…」
「デントに先を越されてしまいましたね」
「…コーン、」
「何ですか?」
「…俺達も付き合っちまう?」
「気持ち悪いこと言わないで下さい。ジムから追い出しますよ?」
「…冗談だっての、」
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