「ナマエちゃーん、」
『はい、何でしょうか?』
長椅子に腰掛け、執務用の机に組んだ脚を乗せているケフカ。つまらなそうに両手は頭の後ろで組んでいる。
「そんな所で何してるんですか?こっちに来ればいいのに」
『星を、』
「星〜?」
窓辺に寄り添う女性、ナマエ。ケフカとは魔導実験の際に出会い、今もシドの元で魔導の研究をしている。加えてケフカにとって最愛の女性だった。
『私、星を眺めるのが好きで』
「ふ〜ん、星ねぇ…」
『ケフカさんも一緒にご覧になりませんか?』
星に向けていた視線をケフカに移せばニコリと柔らかく微笑むナマエ。その笑顔だけでナマエに酔いそうになってしまうケフカ。長椅子から腰を上げれば、ナマエに促されるまま窓辺に歩み寄った。
「ぼくちんよりも星の方が大事〜?」
態とらしく尋ねながら、ナマエの身体を背後から抱き締めるケフカ。
『ケフカさん…!そ、その質問は狡くないですか?』
「ねぇ、どっち〜?」
『もし、星って答えたら…?』
「その時はぼくちん拗ねてナマエを襲うかもねぇ」
『…じ、じゃあ、ケフカさんって答えたら?』
「当たり前って分かってるけど、嬉しくなって襲いたくなるかも〜?」
どちらにしても襲われてしまうのか、と苦笑いを浮かべるナマエ。結局、どちらとは答えずに再び窓辺から星を見上げた。
『ほら、見て下さい。今日は流星群で流れ星が沢山見えるんですよ』
「ちぇ、答えてくれないのね」
『分かり切った答えですから、』
ナマエは抱き締めてくるケフカの手に自身の手を添えては軽く握り締める。ケフカはナマエには敵わない、とそんな表情をしながらナマエが見つめる星空を見上げた。するとタイミング良く流れ星が現れた。
『あ!ほら、今流れましたよ』
「一瞬だねぇ」
『一瞬ですけど、綺麗です…』
星空を眺めるナマエの瞳はキラキラと輝いていた。星を眺める振りをしてケフカは横目でナマエを見遣る。
「ナマエの方が断然綺麗だけどね、」
そう呟けば、ケフカに顔を振り向かせるナマエ。突然何を言い出すのか、と驚いた表情をしている。
「何て顔してるんですか」
『いきなり変な事言うから…』
「変な事?変な事なんて一言も言ってませんけどねぇ。嗚呼ほら、また流れましたよ」
ケフカに教えられ慌てて空に視線を戻すナマエ。流れ星はあっという間に消えてしまい、見上げた頃にはその姿は無かった。
『あぁ、遅かった…――ひゃッ!」
突然視界が真っ暗になった。何事かと思い目許に手を伸ばすとケフカの手がそこにはあった。ケフカの手に寄って目許を塞がれてしまっていたのだ。
「はいはーい、天体観測はオシマーイ」
『な、何も見えません…!』
「好い加減、ぼくちんの事見てくれないと」
そう言って、軽々とナマエの身体を抱き上げるケフカ。真っ暗だった視界は直ぐに光を取り戻したが、今度は身体の自由が利かず、そのままケフカの寝台に運ばれてしまった。
『ケフカさん…!』
「さぁ、ぼくちんの事をしーっかり見て下さい?」
背中に感じるのは柔らかい敷布の感触。ナマエに覆い被さる様にケフカが跨っている。ケフカの顔がゆっくりと近付いて来たかと思えば、そのまま奪われる唇。唇を割っては絡み付いてくる舌先にぞくりとした感覚を覚えるナマエ。
結局はケフカには逆らえないのだ、と口付けを受け入れた。こうやっていつもケフカのペースに呑まれてしまう。
『ん、ふぅ…待っ、』
待って、と言おうとしたがそれも敵わず、また唇を塞がれてしまう。貪り付くようなケフカの口付け。
「…――ヒッヒッ、待つ訳ないでしょ」
『ケ、フカさん…ッ』
「そんな顔して待て言われても説得力に欠けますねぇ」
口付けの所為で火照る頬。酒に酔ったようなそんな表情がケフカを更に駆り立てる。ナマエの両手首をシーツにしっかり縫い付けると、再びケフカは顔を近付け耳元で囁く。
「さァ、長い夜をワタシと愉しみましょうか…」
夜 は こ れ か ら
(…――朝まで啼いて貰いますよ、)
--END--
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