…――正直に。

せっかくデントに貰った服も私が着てしまえば台無しになってしまう。ゴメン、デント…。



「その服、ナマエに凄く――…んぐッ!?」

『やっぱり、ダメーッ!!!』

「ん、んん…ッ!」



急に怖くなった。似合っていないのは自分でも分かっている…だけど、デントの口から「似合ってない」なんて言葉を聞くのが凄く嫌だった。

だから…思わず、デントの口を塞いじゃった…。でも、怖いものは怖い。相手がデントならば尚更だ。



「ん、ぅ…!ンンーッ!!」



口と鼻を同時に塞がれたデントは徐々に苦しそうな表情を浮かべ始めた。顔が青ざめ始めているのは気のせいではない。

デントはあまりの苦しさから、抱き締めていたナマエの身体を離し、口と鼻を覆うナマエの両手を叩いてギブアップを訴えた。デントの意思が伝わったのか、慌てて手を離すナマエ。手が離れた瞬間、デントは不足した酸素を一気に吸い込んだ。



「ぷはッ…!」

『ゴ、ゴメン…!』

「はぁ、はぁ…死ぬかと思ったよ…」

『あ、あははー…』

「笑い事じゃないよ!何で口を塞いだりしたんだ?」

『いや、だって…どうせ、似合わないんでしょ…?だから、デントの口から感想聞きたくないなーって…』

「誰が似合わないなんて言ったのさ?」

『デントがこれから言うんでしょ?』

「そんなこと言わないよ!」



ナマエの言葉にデントはムッとした表情を浮かべながら、ナマエの肩に両手を置いた。



「…似合わないわけないだろ?」

『え…、』

「凄く似合ってる、僕はそう言いたかったんだ」

『…ま、またまたー…デントって嘘吐くの下手なんだからぁ…』



凄く似合ってる、なんて…どうせ御世辞に決まってるんだ…。



「嘘なんかじゃないよ」

『じ、じゃあ、デントの目が悪いって事ね!』

「ナマエ!」



突如、デントの怒鳴り声にも近い大きな声が室内に響き渡る。滅多に大声なんて出さないデントを目の前に、ナマエも驚きを隠せない様子。



『…ッ、デント…』

「なんで、そんな事ばかり言うんだ…」

『…ごめん、なさい…』

「僕は嘘なんか吐いていないし、目だって悪くない。本当に似合ってるから、正直に言ったんじゃないか…」

『…だって、だって…!』

「ナマエ、もう少し自分に自信を持って良いと思うよ」

『無理、だよ…』

「無理じゃない」

『無理!』



無理と言い張るナマエにデントは若干呆れたように溜息を吐いた。デントが溜息を吐いたと同時にナマエの表情が更に曇り始める。



「全く…」

『…無理なんだもん』

「ナマエは可愛いよ?

『嘘吐き』

「だから嘘じゃないってば。本当に可愛いから可愛いって言ってるんだよ?」

『むぅ…』

「素直に喜んだらどうだい?」



デントの言葉にナマエは少しだけ顔を俯かせ、暫し悩んだ後、再び顔を上げデントを真っ直ぐ見つめた。



『…ほ、本当に…似合ってる?』

「うん、似合ってるよ」

『私って、可愛い…?』

「うん、凄く可愛い」

『・・・ッ、』



デントの返事を聞いたナマエは恥ずかしそうに顔を真っ赤にさせ、その顔を隠すようにデントに抱き付き、見た目とは違うデントの広い胸元へ顔を埋めた。



「本当はこのままナマエの事を食べちゃいたいくらいなんだよ?」

『え…!』

「だけど、今は我慢するよ。せっかく着て貰った服を脱がせるわけにはいかないからね」

『も、もう…!デントのえっち!』

「あはは、ちなみに今の冗談じゃないよ?」

『…〜〜ッ!』





…――そう、僕がナマエに贈る言葉は全て冗談なんかじゃない。いつだって本気なんだ。ただ、冗談として受け取って貰うように仕向ける時はあるけど…本当は冗談なんかじゃない。

どんなナマエも大好きだ。恥ずかしがり屋なところも、消極的なところも、自分に自信がないところも、全部含めてナマエだから。それでも、成るべくはナマエを笑顔で一杯にしてあげたい…その為なら僕は何だってするよ。







世 界 で 一 番







世界で一番、ナマエを愛してるから――…






--END--

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