ミルホッグに向けて勢い良く放たれたポッチャマの"バブルこうせん"。
「避けろ、ミルホッグ!そのまま"たいあたり"だ!」
ポッチャマの放った"バブルこうせん"は易々と避けられてしまい、今度はミルホッグがポッチャマに向って攻撃を仕掛けてきた。
君 を 護 る た め に
『ポッチャマ!避けずに"どろかけ"よ!』
「ポチャッ!」
ナマエはポッチャマに避ける指示は出さず"どろかけ"を命じた。ポッチャマはナマエの指示に従い、突っ込んでくるミルホッグの顔面目掛けて泥を飛ばした。
「ミ、ミルーッ!?」
ポッチャマが飛ばした泥は見事ミルホッグの顔面に命中した。"たいあたり"を仕掛ける寸前だったミルホッグはその場で立ち止まり、顔面に付いた泥を拭おうとした。隙が出来たミルホッグにナマエは続けてポッチャマに指示を出した。
『ポッチャマ、"みずのはどう"!』
「ポーチャァアアア!!」
「ミ…ミルゥウウ…ッ!」
ポッチャマの放った"みずのはどう"は泥を拭うミルホッグに命中した。ミルホッグは水の中に閉じ込められ苦しそうにもがいている。そんなミルホッグの様子に、ナマエはニヤリと口角を上げ怪しく微笑んだ。
『ポッチャマ、"めざめるパワー"!』
「ポチャーッ!!」
ミルホッグを閉じ込める水の球体に今度は"めざめるパワー"が放たれた。"めざめるパワー"が水の球体に命中した瞬間、夥しい電流が"みずのはどう"と共にミルホッグを襲った。
「ミィイルゥウウ――…!!」
「なッ…!電気技だと…!?」
水タイプであるポッチャマの電気技に驚きを隠せない様子のプラズマ団員。これには、背後でバトルを見ていたデントも驚いていた。
「まさか、ポッチャマが――…なんて痺れるテイストなんだ…」
デントが驚きながら呟いていると"みずのはどう"から解放されたミルホッグが地面の上で倒れ"ぐるぐる"と目を回していた。
『私のポッチャマは"めざめるパワー"を覚えているの。そして、そのタイプは電気!水は電気を通す…"みずのはどう"を受けているミルホッグに放てば威力は倍増するわ!』
「くッ…!」
『さぁ、ミルホッグはもう戦えないわよ。次のポケモンを出したらどう?…確か、アンタの持ちポケモンはミルホッグの他にワルビルだったかしら…?』
「く、くそ…ッ!」
プラズマ団に捕らえられている時に聞き出していた情報…それはプラズマ団の持ちポケモンや覚えている技、そしてバトルスタンスだった。
何となくではあるが、プラズマ団の攻撃の出方は把握している。次に繰り出される予定のワルビルには水タイプであるポッチャマの方が断然有利。
『さぁ、どうするの?ワルビルを出して戦う?それとも逃げ出す?』
「う、ぐぅ…」
プラズマ団員は戦闘不能になったミルホッグをモンスターボールに戻すと、歯を食い縛り悔しそうな表情を浮かべながら次のモンスターボールを腰から取り外し片手に構えた。
(ワルビルを出して戦う気ね。水タイプの技で一気に攻めてやる…!)
「畜生!覚えてろよー!!」
『え――…きゃあッ!?』
「ナマエさん――…うわッ!?」
「ポチャーッ!?」
突然、周囲に"もくもく"と広がる煙。どうやら、先程プラズマ団員が腰から取り外していたボールはモンスターボールではなく、モンスターボールに似せて作られた煙玉だったようだ。
『…――けほッ、けほッ!ポッチャマ、大丈夫…!?』
「ポーチャー…」
(良かった、ポッチャマは無事みたいね…。)
煙が晴れると先程まで目の前に居たプラズマ団の姿は既になくなっていた。ワルビルを繰り出す振りをして逃げ出したのだろう。
「プラズマ団、逃げたみたいだね…」
ナマエと同様に状況を瞬時に把握したデントが煙に咽ながら言葉を紡いだ。
『デントさん…!大丈夫ですか…!?』
「うん、大丈夫だよ」
『良かった…』
大丈夫、という返事にナマエはホッと胸を撫で下ろす。
『…ゴメンなさい、デントさん。あの、これ…』
ナマエはデントの傍へ駆け寄るとモンスターボールをひとつ差し出した。
『デントさんのモンスターボールです…お返ししま――…ッ!』
デントはナマエが差し出したモンスターボールを無言で受け取ると、次いでナマエの身体をギュッと力強く抱き締めた。
『デントさん…ッ!?』
「良かった、ナマエさんが無事で本当に良かった…!」
『デントさん…』
「あの時、僕は本気でナマエさんがプラズマ団側になってしまったとばかり…」
『ゴメンなさい…自由になる為には、ああするしか方法がなかったんです…』
「どうして、僕が助けに来るのを待っていてくれなかったんだ…?」
『それは――…』
(…――もう、デントさんに迷惑掛けたくなかったから…なんて言ったら、きっと怒られるだろうな…)
「ねぇ、どうして…?」
『…迷惑、掛けたくなかったからです。勝手にジムを飛び出したのも私ですし…』
「ナマエさんに掛けられる迷惑なら本望だよ!」
『え…、』
デントの言葉に大きく目を見開くナマエ。
「…ナマエさん、」
『は、はい…』
「僕はナマエさんの事が本気で好きだ」
ナマエはデントの二度目の告白に静かに目を閉じ、デントの胸に両手を添えた。
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