間違いない…目の前に居るのはナマエさんだ…。
「ナマエ、さん…」
『・・・、』
「無事、だったんだね…」
『はい…』
良かった…ナマエさんの事だから何か作戦を立ててプラズマ団から逃げ出したのかもしれない…。
デントはナマエの無事な様子にホッと胸を撫で下ろしながらナマエの元へ歩み寄った。
「でも、本当に驚いたよ。てっきり今もプラズマ団に捕まってると思ってたからさ…」
『心配させてしまって、ゴメンなさい…』
「良いんだ、僕もゴメン。ナマエさんに辛い思いさせてしまって…」
『いえ…、ところでデントさん』
「ん?」
『…プラズマ団にデントさんのポケモンを盗られたりはされてませんか?』
ナマエが沈んだ視線を向けながらデントに問い掛けた。
「うん、大丈夫だったよ。ほら、この通りさ」
ナマエが無事だった事が嬉しかったのか、デントは先程まで浮かべていた緊迫した表情を一変させニコニコと笑みを浮かべながら、ポケットからヤナップとポッチャマの入ったモンスターボールを二つ取り出した。
「僕のポケモンもナマエさんのポケモンも無事だよ」
『これって私の…』
「うん、部屋に忘れて行ってたから…」
『…そうですか、』
(…――良かった、ポッチャマは無事だったみたいね…)
「さぁ、ナマエさん…君のポケモンだ。君がちゃんと持っていないと、」
そう言いながら、デントは掌に縮小されたモンスターボールが二つ乗った手をナマエに向かって差し出した。
『…それでは、遠慮なく』
「…――え?」
(…――嘘だ、こんなの嘘に決まってる…)
「ど、どうして…」
デントの掌にあった二つのモンスターボールは両方共姿を消していた。それと同時に目の前に居たナマエのさんの姿も遠退いてしまう…一体何が起きたというんだ、デントは困惑している。距離を置いたナマエの手元には二つのモンスターボール…、先程までデントが持っていたモンスターボールだ。
そして、ナマエの背後にはいつの間に現れたのだろうか、数名のプラズマ団員の姿があった。もう何が起きているのか、デントはさっぱり分からない様子。
『ゴメンなさい、デントさん…』
「な、何で…何で君がこんなマネをするんだ…!」
『もう、私は貴方の知ってる私じゃないんです』
「何を言って…」
まさか、ナマエさんは逃げ出す為だけにプラズマ団の配下に就いたとでも言うのか…?この僕を利用してまで…?
「よーくやった!案外、簡単に奪えるもんなんだなぁ!」
「…ッ!お、お前は…!」
「よぉ、ウェイター野郎。あん時の事は忘れてねぇぞコラ」
あのプラズマ団員は…あの時、森でバトルをした時の…!成る程、ナマエさんを囮にして僕を誘き出そうとしていたのか…。
「ナマエさんを誑かしたのか…!」
「はぁ?」
『違う!私は誑かされたりなんかされてない!』
「ナマエ、さん…?」
『違うの…私が自分で決めた事なんです…』
「そん、な…」
デントは言葉を失った。ナマエの言葉の意味すら理解出来なかった、…――否、理解しようとすらしなかったのかもしれない。
君 を 護 る た め に
(デントさん、ゴメンなさい…。デントさんなら――…)
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