結果的に危険かもしれないけど…デントさんが来る前に脱出する方法はひとつしかない。だけど、上手くいくかどうか…。
ナマエは見張りを続けるプラズマ団員へ顔を向けると、その場に居るプラズマ団員全員が驚くような発言をした。
君 を 護 る た め に
『プラズマ団のおじさん』
「今度は何だ?」
『私、やっぱりプラズマ団…否、ゲーチスっていう人の言っている事は正しいなって思えてきました』
「…何だと?ついさっきまでは平和じゃないだのと言っていたくせにか?」
『そりゃ、初めて聞いた時は平和になんかならないって思いました。ですけど、よーく考えてみれば、やっぱり人とポケモンは全く違う生き物…ポケモン達を人間が縛り続けるのは良くないと思ったんです』
「ほう、尤もな考えだな」
『だから、私決めました!』
「決めた?」
『…私、おじさん達と同じプラズマ団に入ります!』
「何ッ…!?」
プラズマ団員も予想していなかった、まさかのプラズマ団入団宣言。その場に居た誰もが目を丸くして驚いていた。
「ほ、本気か…!?」
『本気です!私をプラズマ団の一員にして貰えませんか?』
ナマエはプラズマ団員に真っ直ぐな眼差しを送った。流石のプラズマ団もナマエが嘘を吐いているようには思えなかったのか、暫しプラズマ団員同士で輪を作り、ナマエを今後どうするかヒソヒソと小会議を開き始めた。そして、数分後、先程までナマエと会話の遣り取りをしていたプラズマ団員がナマエの目の前に立ちはだかった。
「…小娘、」
『はい』
「プラズマ団への入団は許可しよう。だが、ひとつだけ条件がある」
『…条件?』
「そうだ。お前を正式に入団させる前に簡単なテストを受けて貰う」
『テスト…』
「そのテストがクリア出来なければプラズマ団への入団は認めん。良いな?」
プラズマ団員の説明に一瞬だけ表情を曇らせるナマエ。しかし、その曇った表情は本当に一瞬だけだった為にプラズマ団達は誰一人として気付いていなかった。
『…――わかりました。そのテスト、受けます』
「よし、良いだろう。それじゃ、テスト内容を説明する…なぁに、本当に簡単なテストだ。そんなに難しく考える事でもないから安心しろ」
プラズマ団員はナマエの目の前にしゃがみ込むと、未だ縄で縛られたままの状態のナマエの肩にポンと両手を乗せ、怪しい笑みを向けた。
「お前を助ける為に今此処に向かっている、あの憎たらしいウェイター野郎のポケモンを奪って来い」
『なッ…!』
「なぁ?簡単だろ?これがお前の受けるテストだ」
『・・・ッ、』
「今のお前なら怪しまれる事もない。隙を見てモンスターボールごと奪ってくりゃ、あっという間にテスト終了だ」
プラズマ団員は未だに怪しい含み笑いを浮かべている。それとは反対にナマエの表情はどんどん雲っていった。先程とは違って一瞬ではなかった為に今度はプラズマ団達にも気付かれてしまった様子。
『デントさんのポケモンを…』
「そうだ。それが出来なけりゃ、お前はプラズマ団に入団する事は許されん」
『・・・ッ、』
「お前にそれが出来るか?出来るなら今すぐにでもこの縄を解いてやろう。ただし、逃げるようなマネを少しでもしたら此処に居る俺達プラズマ団全員が容赦なくお前に襲い掛かるからな?」
プラズマ団員の言葉を聞いたナマエは顔を俯かせ、プラズマ団員に見られぬよう唇をキュッと噛み締めた。程なくして、俯かせいていた顔を上げるとナマエの表情は先程の曇っていた表情ではなくなっており、何かを決意したように真剣な表情をしていた。
『…――デントさんの…否、デントのポケモンは必ず私が奪ってみせます』
「よし、決まりだな」
…――ナマエが答えを出して間もなく、ナマエの身体をを縛っていた縄が解かれた。
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