「やっぱり暗いなぁ…二人とも足元には気を付けるんだよ」

「ナップ!」

「ポチャ」


あれからどれくらい経っただろうか。目の前に広がる景色は一向に変わる気配がない。ゴツゴツとした岩壁に、天井から突き出る氷柱にも似たような岩の先端部から滴る水。重力に逆らえなくなった水滴が地面に溜まった水溜りに落下するとピチャン…という音が洞窟内に響き渡った。











間違いなく最深部には近付いているはず、しかし凸凹した地面を一時間以上歩き続けたポッチャマとヤナップのは疲れ切った表情をしていた。

そんなポッチャマとヤナップを見たデントは、二人を一旦モンスターボールへ戻す事にした。



「二人とも疲れただろ?ボールに戻って休んでいて良いよ」



デントは各々のモンスターボールを二匹に向け、二匹をモンスターボールへと戻した。



「しっかり体力を温存しておいてくれ」



最深部に着けばプラズマ団とバトルになる事は間違いないはず。此処でポッチャマやヤナップの体力を減らすわけにはいかない。デントはモンスターボールを小さくするとポケットの中に再び仕舞い込んだ。







*****




「…――というわけだ。どうだ、凄いだろう?ゲーチス様はポケモンを解放し世界に平和をもたらそうとしてくれているのだ!」

『本当にそんな事をして平和になれるのかしら?』

「なんだと?」



最深部で捕まったままのナマエはプラズマ団員から情報を聞き出していた。どうやら、このイッシュ地方で活動を主としているプラズマ団の狙いは"ポケモンの解放"とやらで、人間の手からポケモンを手放そうと目論んでいるらしい。



『…ねぇ、プラズマ団のおじさん』

「誰がおじさんだ」

『プラズマ団のおじさんは平和って何だと思います?』

「だから、おじさんじゃねぇっての!…まぁ、何だ…その質問には答え難いな」

『私が思うにゲーチスって人の言う平和は本当の平和じゃないと思うんです』

「そんな事はない!」

『どうして?人間の手からポケモンを手放すって事は、おじさん達だってポケモンを手放さなきゃならないんですよ?悪い事をしていてもポケモン達にとっては大切な主人なんですよ?』

「むむ…、」

『私は"ポケモンの解放"が世界の平和に繋がるとは到底思えません』



ナマエから尤もな意見を聞かされたプラズマ団員は暫し黙り込んでしまった。



「そ、それでも俺はゲーチス様の忠実なる部下だ。ゲーチス様を御意思を否定する事は出来ん」

『そうですか。まぁ、此処でどうこう言っても私がこの場から解放される訳じゃないんで、もう何も言いません』



もう何も聞き出す事はない。今この場に居るプラズマ団員全員も手持ちポケモン、その技…今までのバトル内容、プラズマ団の狙いを全て聞き出せたのだから。案外、プラズマ団の下っ端達は無能なのかもしれない。此方が下手に出ていれば警戒される事もない。





(デントさんが来る前に自力で脱出が出来るかもしれない――…!)





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