『ケ、ケフカ様…!自分の足で歩きますから…ッ』

「うるさい」

『・・・ッ、』



レオの執務室からナマエを抱え上げたまま、自室へと戻るケフカ。その途中、数名の兵士と擦れ違う。兵士達は抱えられたナマエとケフカの姿に何が起きたのだ、と立ち止まっては二人を振り返っていた。





師 と 私 と 





自室へ辿り着けば勢い良く扉を開き、また勢い良く扉を閉めるケフカ。そのまま、備え付けられていたソファーにナマエを放り落とす様に身体を下ろした。



『…――ひゃッ!』



突然、下ろされ驚くナマエ。ソファーのクッションのお陰で衝撃等は無かった。しかし、ソファーから天井を見上げれば、冷たい視線でナマエを見下ろすケフカの姿。ナマエはごくりと息を飲み込んだ。



「ナマエ、」

『は、はい…』

「そんなにワタシを嫉妬深い男にさせたいですか?」

『そ、そういう訳では――…かはッ!』



突如、ケフカの手が伸びて来た。それはナマエの細い首を掴み、容赦無く力が籠められる。ナマエはケフカの手首を反射的に握り、首から離そうとするが全くと言って敵わなかった。その間、どんどん息苦しくなり視界が涙で滲む。



『ッ、は――…ッぅ』

「苦しいですか?苦しいでしょうねぇ、ワタシも苦しいです」

『…ッ、く…』



本能で酸素を欲する身体。どうにか酸素を取り込もうとパクパクと口を微かに動かしている。段々と意識が薄れてきた頃に漸くケフカの手が離された。同時に勢い良く咳き込むナマエ。



『…――ゲホッ、はぁ…ッ!』



先程まで掴まれていた首を両手で押さえながら、咳き込み続けている。



「お仕置きなら幾らでも受けるって言ってたっけ?」

『・・・ッ!』



ケフカの言葉にハッとした表情を浮かべるナマエ。ケフカは笑っていた。悪い事を考えている時の笑顔だ。何かを壊す時の――…。



『ケ、フカ様…わた、し…』

「何?」

『…ごめなさ、』



仕置きが嫌だった訳ではない。悪いのは自分だ、とそう思っていたから。ただ、このままケフカに嫌われて捨ててしまわれるのではないだろうか、とそんな恐怖に駆られたナマエはケフカに縋り付くようにケフカの胸元に抱き着いた。



「・・・、」

『お願…ッ、捨てない…で…』



縋り付くナマエを目の前にケフカは大きく溜め息を吐いては、やれやれと首を横に振った。



「…もう良いです、萎えました」

『ケフカ様…?』

「ぼくちんがナマエを捨てる訳ないでしょ。捨てるくらいなら殺しますから」



ケフカは涙で濡れたナマエの目元を指で拭う。反射的にキュッと目を瞑るナマエ。しかし涙は拭っても溢れては再び頬を伝っていく。



「泣きたいのはこっちですよ、」

『…と、止まらなくて…ッ』

「お願いだからさぁ、大人しくぼくちんの傍に居てくれない?」

『で、でも…』

「このままだとナマエに絡む奴らを全員殺してしまいそうになるから」



ケフカの眼を見れば、殺すというのは本当だろう。ナマエはケフカの言葉に口を結び、小さく頷いた。



「暫くレオの処に行くのは禁止ね、例え会ったとしても言葉を交わしてはダメですよ」

『分かり、ました…』

「もし約束を破れば、その時は分かるね?」



ケフカの冷たい視線が再びナマエに突き刺さる。



『あの、ケフカ様…』

「ん〜?」

『私…その、ちゃんとケフカ様の事、愛していますから…』

「突然だね、変なナマエちゃ〜ん。でもぼくちんも愛してるよ」



ニヤリ、と笑うケフカ。そっと首筋に手を触れれば痣になってしまった、その場所に治癒魔法を唱えた。ケフカの手形に沿って鬱血していた痣は綺麗に消えてしまった。息苦しかった気道も元に戻る。



『ありがとう、ございます…』

「苦しむナマエも堪ンなかったけどね、」



ケフカは覆い被さる様にナマエを抱き締めれば、消えてしまった痣とは別の痣を首筋へ残した。



『んッ…、』

「良いですねぇ、ナマエの肌には紅が良く映える…」



残した痣をまじまじを見つめては、痣の上にぺろりと舌を這わせ舐め上げる。その瞬間、ぞくりとした感覚を覚えるナマエ。



「そうだ、ナマエ」

『・・・?』

「寝る前に一緒にお風呂に入りましょうか」

『え、一緒に…?』



ケフカの突然の誘いに驚くナマエ。ケフカは再びナマエの身体を軽々と抱き抱えると、ナマエの返事を待たずにバスルームへと向かった。




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