執務が終わったその夜、ナマエは再びレオの元を尋ねていた。仕上がった書類を提出する為だ。





師 と 私 と 





『此方が報告書、そして此方がケフカ様の始末書です』

「ああ、ありがとう。目を通しておく…――それよりもナマエ、」

『はい、何でしょうか?』



レオは提出された書類を受取ると机の端に寄せ、ナマエに視線を向けた。



「今朝の事なんだが…」

『え…、』

「これはセリスが言っていた事だ、違うなら違うと言ってくれ」

『は、はい…』



一体何を言い出すのだろうかと、ナマエは内心ドキドキしていた。




「…ケフカに、その…抱かれたか?」




…――嗚呼、やはりバレてしまった。流石はセリス将軍だ、とナマエは心の中で呟いた。



「ち、違うなら違うって言って良いんだからな!セリスの思い過ごしとも思っていたからな…」

『…違、』

「そうだよな…!違うよな!ハハッ…本当にすまない、」

『…わ、ないです…』



一度は違う、と勝手に思い込んでしまったレオだったが、"違わない"とレオの耳には確かにそう聞こえ固まってしまった。



「…本当か?」

『本当です、ケフカ様と…』

「そ、そうか…」



レオは腰掛けていた椅子の背凭れにボス、と背を預けた。ナマエの答えにどう反応しようか考えているようだ。



「セリスの勘は正しかったのか、」

『私も驚きました…』

「ナマエは嫌ではないのか?まさか無理矢理、なんて事はないよな?」

『そんな、無理矢理だなんて…!私も望んでいた事ですから、』

「そうか、それなら良いんだが…」



ケフカが無理矢理襲ったのではないと分かっただけでもレオは安心した様子だった。二人がケフカとの関係で話をしていると、突然レオの執務室の扉が開かれる。



「いつまで待たせるんですか、ナマエ!待ち草臥れて迎えに来る羽目になったじゃないですか!」



ノックもせずにズカズカと入って来たのは言わずもがなケフカだった。書類を届けに行ったナマエが中々戻って来ない為に自ら連れ戻しに来たのだ。



『ケ、ケフカ様…』

「ケフカ、無礼だろう」

「もう用は済んだでしょう!帰りますよ、ナマエ!」

『え、ちょ…ッ』



ケフカはナマエの手首を強引に掴んだ。レオの顔を見る事なく、寧ろ誰も居なかったかの様な振る舞いだった。



「ケフカ!」

『ケフカ様、痛いです…!それにレオ将軍が…』

「うるさい。帰ったらお仕置きだ」

「・・・!待て、ケフカ!仕置きとはどういう事だ、ナマエは何もしてないだろう!」



仕置き、という言葉にレオは慌ててナマエの握られてない手首を握り引き留めた。



『わわ…!』



引き留められ、ガクンと身体が揺れる。同時にケフカの歩も止まった。



「…何ですか?」

「何故、ナマエに仕置きが必要なんだ」

「うるっさいですねぇ、お前には関係ないでしょ」

「そういう事を言ってるんじゃない。罪を犯してない人間に何故仕置きを与えようとする」

『あ、あの…将軍、私は大丈夫ですから…!』



険悪な状況に慌てて止めに入ろうとするナマエ。レオの優しさには感謝したいところだが、レオの取る行動はケフカを苛立たせているだけだった。



『ケフカ様も落ち着いて下さい、ね?仕置きなら幾らでも受け――…ッ、んぅ!』



突如、重ねられる唇。強引に唇を割られ口内で舌を探られる。見つかってしまえば、それはねっとりと絡められた。息継ぎなんて出来ないくらい深く腰が砕けてしまいそうになる感覚を覚えるナマエ。目の前の光景にレオは口を半開きにし唖然としている。同時に掴んでいた手を離した。



『ん、んぅ…!ふぁ、ンン…ッ』



飲み込めなかった唾液が口の端から溢れ出る。



『…――ッ、はぁ…!』



レオに見せつけるように口内を犯されたナマエ。漸く解放して貰えたかと思えば、ナマエの身体は突然宙に浮いた。ケフカに抱き抱えられたのだ。



「…お前には一生理解なんて出来ないだろうな、レオ」



ケフカはそう言い残して執務室の扉に手を掛けた。



「…――お、おい!」



ケフカの言葉に我に返ったレオ。引き留めようしたが時既に遅し、ケフカとナマエの姿はもうそこには居なかった。




「お前達は本当にそれで幸せなのか…?」




独り残されたレオはそう呟く事しか出来なかった。





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