「…――と、いう訳なんだ」

「ポ、ポチャ…」



ポッチャマをモンスターボールから出した後、デントはこれまでの経緯をポッチャマに全て伝えた。話を最後まで聞いた後のポッチャマは「信じられない」という驚きの表情を浮かべていた。











「もしかしたら、プラズマ団が仕掛けた罠かもしれないけど…」

「ポチャー…」

「だけど、実際にナマエさんが何処にも居ないんだ…。罠かもしれないし本当かもしれない、それでも僕はナマエさんを助けたいんだ。だから。ポッチャマの力を僕に貸してくれないかな?」

「…ポチャッ!」



デントはポッチャマに向かって手を差し伸べた。差し伸べられた手にポッチャマは一瞬だけ不思議そうな表情を浮かべたが、差し伸べられた手の意味を直ぐに理解し、小さな両手でデントの手をギュッと握り堅い握手を交わした。



「さて、ポッチャマ…早速お願いがあるんだけど…」

「ポチャー?」



デントは再び腰ポケットに手を入れると、ポケットの中からモンスターボールを取り出した。



「出て来い、ヤナップ!」

「…――ナップ!」

「ポッチャマは水タイプのポケモン…君なら、この水辺を泳ぐ事くらい容易い事だよね?」

「ポッチャマ!」

「ポッチャマ、少し重いかもしれないけどヤナップを背中に乗せて、この水辺の途中に所々ある岩まで移動してくれるかい?…そうだな、まずは此処から一番近い、あの岩まで頼むよ」

「ポチャ!」



デントの指示を受けたポッチャマは指示通りに水辺へ飛び込み、ヤナップが背中に乗るのを水面に浮きながら待った。



「さぁ、ヤナップ。ポッチャマの背中に乗って一緒に行動してくれ」

「ナップ!」



ヤナップもデントの指示に首を縦に振りながら返事を返すと、水面に浮かぶポッチャマの背中に飛び乗った。



「二人とも気を付けるんだよ」

「ヤナッ!」

「ポーチャ」



ポッチャマはデントの指示通り、デントが居る位置から一番近い大きな岩へ向かった。ポッチャマ達がその岩に近付いたと同時にデントが再び指示を出す。



「ポッチャマ、ストップ!その岩で良いよ!」

「ポチャ!」



デントの居る位置からポッチャマが居る岩までの距離は約五メートル前後。デントは憶測で距離を判断すると、今度はヤナップに指示を出した。



「よし…ヤナップ、その位置からなら"つるのムチ"が届くはずだ!"つるのムチ"で僕をその岩の上まで運んでくれ!」

「ヤナッ!」



ヤナップはデントの指示に再び大きくうなずくとシュルル…と、つるのムチを伸ばし、デントの腰周りにツルを巻き付けた。



「ヤーナァ…」



自分よりも遥かに重いデントの身体が水辺に落ちてしまわぬよう、慎重にデントの身体を水面から突き出た岩場に運ぶヤナップ。その後も今と同様に岩から岩へデントを運びながら、何とか無事に水辺を渡り切る事が出来たデント。



「ふぅ…、有難う二人とも」

「ポチャ!」

「ヤナッ!」



(取り敢えず、最初の難関は突破出来た…。だけど、この先もスムーズに進めるとは到底思えない…)




デントは周囲を警戒しながら、ポッチャマとヤナップと共に再び最深部を目指すべく歩み始めた。





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