「地下水脈、此処だ…」
プラズマ団の下っ端団員らしき人物からナマエが、この地下水脈の穴に居ると聞かされたデントは、大方罠かもしれないと感じつつも地下水脈の穴へ遣って来た。
君 を 護 る た め に
未だ洞窟内には足を踏み入れていないが、やはり入る前でも洞窟内がとても暗いという事が外からでも分かる。まさか、こんな所でプラズマ団に捕まっているとは思ってもいなかった為に、暗闇を照らす懐中電灯なんて物も用意はしていない。
しかし、そんな事を言っている場合ではないのだ。この奥にナマエが本当に居るとするならば、目を凝らしてでも最深部に辿り着かなければならない。
「ふぅ…」
デントは一度だけ軽い深呼吸をすると意を決して洞窟内へ足を踏み入れた。
「うわ、真っ暗だな…」
洞窟内に入ると予想通り暗く、かなり視界が悪かった。それに加えて、悪天候の為に洞窟内に差し込む光も天気が良い日より弱く、洞窟内をより一層暗くしていた。この暗さに目が慣れるまでは少々時間が掛かりそうだ。
「さて、此処からどうするか…」
ゆっくりと奥に向かって前進するデント。地下水脈など普段の生活上では利用する事のない洞窟。その為、地下水脈内の構造を把握していないデントにとっては、まるで迷路にも等しい洞窟なのだ。一見単純そうには見えても下手に道を間違えれば、脱出が困難になる危険性も否定出来ない。
…―――ピチャン
洞窟内に入って数十分後、滴る水滴の音と共に現れた大きな水辺がデントが進む道を遮った。
「行き止まり…?」
デントは「まさか、そんな…」と心の中で呟きながら目の前に現れた水辺の水面を覗いた。覗くだけでは水深がどれ位あるのかは判断不可能。
試しに腕の袖を巻くり上げ、水面に腕を付けてみるがデントの腕の長さでは到底、底には届かないであろう深さだった。近くに転がる大きめの石を落としてみても、石が水辺の底に落ちる音が聞こえるまでには少し時間が掛かった。
「うーん、結構深いな。これじゃあ、僕の足だけで進むのは無理だな…」
…――かと言って泳いで渡るわけにもいかない。どうしたものかと、顎に手を添えて悩み始めるデント。
「…あ、そうだ」
水辺の目の前で悩み込むデントだったが、暫くして何かを思い付いたようにズボンのポケットに手を入れ、中からモンスターボールをひとつ取り出した。しかし、取り出したモンスターボールの中から繰り出されたポケモンはヤナップではなかった。
「さぁ、出ておいで」
デントが取り出したモンスターボールを地面に向けると同時に赤い閃光が放たれた。
「ポチャー?」
「やぁ、ポッチャマ」
「ポチャポチャ」
赤い閃光が放たれた先に姿を現したのはナマエのパートナーであるポッチャマだった。ポッチャマは一体何が起きたのかと不思議そうにデントとその周囲を見渡している。
「ポッチャマ、折り入って君に相談があるんだ?」
「ポチャ?」
デントは身体を屈めポッチャマに視線を合わせると、ナマエがプラズマ団に捕まって今に至るまでの経緯を話し始めた。
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