落雷が鳴り響く豪雨の中でナマエを探し出すべく、ひたすら走り回るデント。豪雨の所為で視界もかなり悪く、この状況で見つけ出すのは困難とも言えるだろう。



(ナマエさんは必ず僕が見つけ出す…!)











サンヨウシティに繋がるゲートを抜け、三番道路に遣って来たデントは周辺を見渡しながら先を進んでいた。



「あーら、良い男見ィつけた」

「誰だ…ッ!」



突如現れた怪しい格好の人物。相手が真っ黒な傘を差している為にそれが影となり直ぐには分からなかったが、よく目を凝らして見ると何処かで見た事のある服装だった。



「…――プ、プラズマ団!」

「御名答。ところで、こーんな雨の中、何してるの?」

「お前には関係ないだろう」

「…そう。良いこと教えてあげようと思ったのに」

「・・・?」

「アナタの大切な彼女、私達プラズマ団がお預ってるのよ〜」

「なッ――…!」



(何て事だ…ナマエさんがプラズマ団に――…)



プラズマ団員の女性は至近距離までデントに詰め寄ると悪戯な笑みを浮かべながらデントの耳元で先程より声色を低くして呟いた。



「彼女に会いたければ、この先にある地下水脈の穴最深部にいらっしゃい」



その言葉にデントは問い詰めようとしたが、プラズマ団員は「じゃあね」と言い残して、その場から立ち去ってしまった。ナマエがプラズマ団に捕まっているという状況を知ったデントは焦りの色を隠せない様子。



「ナマエさん…ッ!」



デントは雨に打たれながら両方の拳を思い切り握り締め怒りに震えるが、こうしては居られないと、ナマエが捕まっているという地下水脈の穴へ急いだ。






*****




…――一方、地下水脈の穴最深部では未だに身体を縄で縛られているナマエと、この作戦の首謀者であるプラズマ団員、更にその見張り役のプラズマ団員がデントが来るのを待ち侘びていた。




『ねぇ、プラズマ団さん』

「…何だよ?」

『こんな状況で申し訳ないんですけど、私お腹が空きました』

「はぁ?テメェ、この状況でよくそんな事言えるなぁ…」



プラズマ団員が怒るのも無理はない。普通であれば恐怖に怯えて空腹感さえ忘れてしまうであろう、この状況にナマエは平然としているのだ。

さらに追い討ちを掛けるかのように"ぐるるるる〜…"と腹の虫を鳴かせるナマエ。そんなナマエにプラズマ団員は呆れて物を言えない様子。



「そ、そんなに腹減ってんのか?」

『ええ、もうかなり。よく思い返して見れば今朝から何も食べてなかったなぁって…』

「…ったく、何なんだこの女は…。つーか、此処で腹減ったって言われても食料なんて無ぇぞ?」

『ええ!ホントに何も無いんですか…?』

「当たり前だろ!」

『ちぇー…じゃあ、プラズマ団さん』

「…今度は何だ?」

『暇なので私と楽しくお話でもしましょう』

「はぁ…!?」

『そうですねぇ…あ!プラズマ団さんの持ちポケモン教えて下さいよ!ポケモン自慢聞きたいです!』

「お、俺に自分のポケモンを自慢しろってか…?」

『はい!先日、襲われた時あったじゃないですかー、その時から少し気になってたんですよ!』

「ほ、ほう…そうか、それじゃあ…仕方ねぇな、少しだけだぞ?」

『はい、是非是非!』



(…――よし、思惑通りだわ。デントさんが此処に到着する前にコイツ等の手持ちポケモンを把握してやるんだから!…出来る事ならば、デントさんにこんな危険な所へ来て欲しくないんだけど、ね…)





ナマエが捕まっている地下水脈の穴最深部に、この状況では考えられない和やかな雰囲気が漂い始めた。



backnext


×
- ナノ -