「…――ナマエさん!」
…――居ない…。
建物内にある部屋は全て確認したはず…。一体、何処に行ってしまったんだ…――まさか…!
君 を 護 る た め に
デントは何を思ったのか慌てて室内の窓から外に視線を向けた。
(まさか、この悪天候の中…外へ?)
「デント!」
「…ポッド、」
デントが窓の外に視線を向けているとポッドが息を荒げながら遣って来た。
「デントのこと疑って悪かった!」
「え…?」
「犯人はデントじゃなかったんだな…」
「…ゴメン、元々の内容が分からないんだ。だから、何で殴られたのかも分からないんだけど…」
「…――それは、コーンがお話しましょう」
ポッドの背後から静かに現れたのはコーンだった。コーンの表情は普段より落ち着きがないように見える。
「…コーン?」
「まずはこれを…」
コーンはポケットの中に手を滑らすと中からモンスターボールをひとつ取り出した。
「これ、は…?」
「これはナマエさんのモンスターボールです。勿論、中にはポッチャマが入っています」
「え…、」
「これが何を意味しているのか、デントには分かりますか…?」
コーンの言葉と目の前のモンスターボールにデントの表情は少しずつ曇っていく。
「お、おい…コーン、話の内容が飛び過ぎじゃねェか…?」
「…ポッドは黙っていて下さい」
「お、おう…」
「デント、コーンはナマエさんに酷い事をしてしまいました」
「酷い事…?」
「ポッド、デント、ナマエさん…貴方達三人を試すが為に、コーンはナマエさんの首筋にキスマークを付けました」
「なッ――…」
「その様子じゃ、デントは未だ見ていないようですね…。」
「うん、見てないよ…」
「・・・、本当に試すだけだったんです。ですが、まさか…こんな事になるとは…。ナマエさんが行方不明になってしまったのも全てコーンの責任です。本当にすみません…」
「今此処でコーンが謝っても仕方がないよ。その前にナマエさんを早く見つけ出さないと…」
「そう、ですね…」
「悪ィ、デント…。俺、ナマエちゃんがキスマーク付けてんの見て、てっきりデントが付けたんだと思っちまったんだ…」
「それで、いきなり殴り込みに来たわけか…」
「だ、だって…!ナマエちゃんの様子もおかしかったんだよ…デントの事になると突然怯え出すし…それに――…」
「それに…?」
「俺、ナマエちゃんに惚れてるみてぇなんだ…」
「…そっか、」
ポッドの告白を聞いてデントは全く驚かなかった。寧ろ、デントの反応にポッドが驚いている。ポッドがナマエのことを好きだった事は、デントも薄々感じていた。増してやポッドは三つ子の中で一番感情が表に出やすいタイプだ。
あとは"三つ子としての繋がりがあるから"と言ったところだろうか。同じ血が流れている彼等だからこそ分かる事もあるようだ。インスピレーションとは少し違ったものだけれど。
「お、驚かねェの…?」
「…うん、何となく気付いてたしね」
「うは…!マジかよ…!?俺なんて、ついさっき気付いたばっかなのに…」
「ポッド、それは"鈍い"と言うのですよ」
「うるせぇ!それより、どうすンだ?ナマエちゃんは屋内には居ないみてェだぜ?」
「…――そんなの決まってる、探しに行くまでさ」
デントはコーンの掌にあるナマエのモンスターボールを手にしすると、ポッドとコーンの二人を残しサンヨウジムを飛び出した。
「あ、オイ!デントッ!!」
「デント…」
「あーあ…行っちまったよ…」
「…仕方ないですね、此処は大人しく二人の帰りを待つ事にしましょう」
「…なぁ、コーン」
「何ですか?」
「…お前ってさぁ、ナマエちゃんの事…どう思ってンの?」
「…秘密です、」
「何だよソレ!」
「コーンと同じ三つ子なら、言わなくても分かるんじゃないんですか?」
「嗚呼、そういうこと…」
コーンの気持ちを察したポッドは若干呆れた様子でコーンを見つめていた。どうやら、この三つ子達の想いは同じものであるようだ。
「さぁ、ポッド…二人が帰って来るまでに夕食の準備を終わらせてしまいましょう」
「え、もう?まだ昼だぜ?」
「今日は特別です。温かい豪華な料理で二人を迎えてあげましょう」
「あー、成る程な。よーし、いっちょやるか!」
コーンの提案にヤル気の色を見せたポッドは腕捲りをしながらキッチンへ向かった。その後に続いてコーンもキッチンに足を向けた。
(…――どうか、デントとナマエさんが無事でありますように…)
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