『離してってば…!』
「うるせぇな!離すわけねぇだろ!」
『・・・ッ、』
君 を 護 る た め に
まさか、此処に来てプラズマ団に捕まってしまうなんて…。だけど、幸いな事にポッチャマはサンヨウジムに置いてきたまま…。取り敢えず、ポッチャマを盗られる心配は今のところは無い。
…――なら、何で私の事を捕まえたの?ポケモンは手持ちにないし、私が今此処に居ても何の意味も無い。まさか、この間の仕返しでもするつもり…?
「いいか、少しでも逃げるような素振りをしてみろ。痛い目を見るのはお前自身なんだからな」
『一体どうするつもり…?』
「さぁな…?オイ、この女を囮に例のウェイターを誘き出せ!」
『なッ…!』
"例のウェイター"って、私を囮にデントさんを此処へ誘い込むつもり…!?
…そうか、仕返しの相手は私じゃなくてデントさんだったんだ…。だから、一緒に居た私を囮に――…となると、この状況は非常にまずい…!でも、さっきの状況で…デントさんは私の事を助けに来てくれるのかな…?
ナマエは心の中で願った。デントがプラズマ団の罠に嵌らぬように、と…。
(プラズマ団は、この間の仕返しとデントさんのポケモンを奪う気なんだ…!そんなこと絶対にさせるもんか…!)
「オイ、小娘」
『…何よ、』
「この間、一緒に居たウェイターは何処に居る?俺達の情報網じゃサンヨウシティに居るって事になってんだが…それは本当なのか?」
『そんな事、私がアンタに教えると思う?』
「無理にでも教えて貰うさ」
『何を――…キャッ!』
突如、洞窟内に響く布が裂ける音。気付けば、ナマエの胸元はプラズマ団によってビリビリに引き裂かれていた。引き裂かれた衣服の隙間からは下着が覗いている。
「話さねぇと、こうなっちまうんだぜ?」
『・・・ッ、変態男…!』
「何とでも言え」
抵抗しようとしても太い縄で胴体と両腕を縛られていた為に、ナマエには成す術が無かった。
(…――デント、さん…!)
*****
「…――ッ!?」
(今、一瞬だけナマエさんの声がしたような…)
一方、サンヨウジム内では未だにデントとポッドの対立が続いていた。
その最中、デントは"ナマエの声がした"とポッドを他所に部屋中を見渡した。そこで初めてナマエがいつの間にか居なくなっている事に漸く気付いた様子のデント。
「…――居ない!」
「あ?何がだよ?」
「ナマエさんに決まってるだろ!」
「なッ――…」
デントに言われ、ポッドもナマエの姿が無い事に漸く気付く。
「…ナマエさん…!」
「ど、何処に行っちまったンだ…?」
「ポッド、そこを退け!」
「うおッ…!?」
デントは目の前に立ちはだかるポッドを退かし、ナマエを探しに行くべく部屋を飛び出した。
(ナマエさん…、一体何処に――…)
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