ケフカに髪を乾かして貰った後、ナマエとケフカは朝食を摂った。食事は普段から二人で摂っていた為、それは変わらない日常だった。
師 と 私 と 、
「まーた、朝のなんちゃらってのに行くんですか?」
『はい、行ってきます』
「もー、ぼくちん淋しいじゃないの〜」
『ちゃんと戻りますから、』
朝食を摂った後、法衣に着替えたナマエは一度ケフカの元を離れ朝の挨拶回りに赴いた。ケフカがしない分、自分だけでもと毎朝極力行う様にしていた。廊下を歩く途中、兵士と擦れ違う。兵士は弟子であるナマエに敬礼した。
「おはようございます、ナマエ様!」
『おはよう。毎日、そんなに畏まらなくても良いのに…』
「と、とんでもない!ケフカ様のお弟子様ですから…!」
…――ケフカの弟子だから、畏まっていないと後で何をされるか分からない。きっとそんな恐怖からナマエにもこういった態度を取るのだろう。ナマエは心の中で薄々感じていた。ケフカの普段の行いから殆どの兵士達はケフカの事を良くは思っていなかった。
『そ、そっか…、何だかごめんね。今日も頑張って、』
「はい!失礼します!」
再度、敬礼を向ける兵士。そんな兵士にナマエは笑みを向け兵士の前を後にする。ナマエが向かった先はレオの元だった。
『おはようございます、将軍』
「おはよう、ナマエ。毎朝律儀だな」
『はい、もう習慣付いてますので』
「・・・?ナマエ、お前…」
ふと、書類に向けていた視線をナマエに移せば、何処となく普段と違うナマエの雰囲気に眉を顰めた。
『え、どうかしましたか…?』
「いや、何というか…言って良いのかわからんが、女性らしさが出たというか…」
『・・・!』
「すまん、どうかしているな。今のは忘れてくれ、」
レオ将軍しては鋭いな、とナマエは少し慌てつつも普段通りを装った。
『あはは、今日の将軍は何だか変ですね…』
「本当にな、すまない」
『いいえ、気にしてませんから。それじゃ、戻りますね』
朝の挨拶も済み、レオの執務室から出ようと扉を開けるとそこには別の人物が立っていた。
「あら、ナマエ」
『セリス将軍…!』
扉の向こう側に立っていたのはセリスだった。彼女もまたケフカ同様に魔導実験に寄って魔導の力を与えられた人造魔導士だった。弱冠十八歳の女将軍。ナマエと年齢は然程変わらないにしろ、容姿端麗。女性のナマエから見てもとても美しい女性だった。魔剣士としての強さも名高い。
「おはよう、ナマエ。レオに朝の挨拶?」
『はい、丁度終えたところで。この後、セリス将軍のところにもお伺いしようかと思っていたんです』
「そう、ありがとう。…それよりもナマエ、何だか雰囲気変わったような…?色っぽくなったというか、私の気の所為…?」
『・・・ッ!』
レオに続き、セリスにも勘付かれるナマエ。セリスの言葉が偶々聴こえていたレオの耳がピクリと動く。
『き、気の所為ですから…!わ、私…戻らないといけないので…ッ!』
二度目の出来事に、ナマエは平常が保てなくなると慌ててその場を小走りで去っていく。
「ちょ、ちょっと!…あぁ、行ってしまったわね」
「セリス、」
「何かしら?」
「ナマエの雰囲気、変わった様に思えてならんのだが…」
「そうね、私もそう思うわ。何かあったのかしら」
セリスは一瞬だけ考えると、もしかして、とその答えに辿り着いた様子。
「まさか、ナマエがね…ふふ、」
同じ女性同士である所為か、ナマエに何が起きたのか、直ぐに分かってしまったセリスであった。
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