翌朝、天気は生憎の雨。朝なのにも関わらず外は真っ暗で時折雷も鳴っていた。ゴロゴロと大きな落雷の音がサンヨウシティ全体に鳴り響くと同時にナマエが目を覚ます。
『ん…あれ、朝…?』
朝…にしては、部屋が暗いな…。嗚呼、今日は雨なのか…。私ってばコーンさんが出て行った後、ずーっと悩んでて…それから寝ちゃったんだ…。結局、悩んでも答えなんて見つからなかったけど…。
『やだなぁ…』
ナマエは布団に入ったまま寝返りを打つと鳴り響く落雷の音を遮るように毛布を頭まで被った。
君 を 護 る た め に
「…――ちゃん、ナマエちゃん!」
『ん、ぅ…』
あれから再び眠りに就いてしまったのか、今度は自分の名前を呼ばれる声で目を覚ますナマエ。
「ナマエちゃん、もう昼だぞ!つっても天気最悪だけどな…」
『だ、れ…?』
薄っすらと目を開けば、視界にぼんやりと浮かぶ人影。以前にもこんな事があったな…確か、その時はデントさんに――…
『…デ、ント…さ…ん…ッ!?…ヤッ…!』
「え、えぇ…ッ!?」
最初は寝惚けていたナマエだったが、デントを思い出しては段々と記憶が鮮明になり、その恐怖からかガバッと勢い良く寝台から上体を起こした。
しかし、昨日の出来事の所為か、ナマエは目の前に居る人物を確認する事なく、唯々毛布を握り締めながら俯いた状態でカタカタと震えていた。
「ナマエちゃん!どうしたんだよ!?俺だよ、ポッドだ!デントじゃねェよ!」
『や、だ…ッ!デントさん、…――え?ポッド、君…?』
突然怯え始めるナマエに何が何だか分からなかったポッドは震えるナマエの両肩に手を置き軽く揺さぶった。ナマエも目の前に居る人物がポッドだと分かれば、ゆっくりと顔を上げ目の前に居る人物を再確認した。
『あ…ゴ、ゴメンなさい…!』
(私ってば、デントさんだと思って取り乱しちゃった…)
「だ、大丈夫か…?」
『は、はい…』
「デントと…何かあったのか?」
『い、いえ…』
この状況で「何もない」なんて返事をしても無駄だとは分かっていたけれど、どうしても話す気分にはなれなかった。だけど、ポッド君は「そっか」と言って、それ以上は特に問い質す事なく納得してくれた。少し驚いたけど、安心もした。
「ところで、ナマエちゃん…具合悪いんだって?」
『え…?』
「いや、昨日さ…コーンがナマエちゃんの具合が悪いって言ってたから気になってたんだよ」
『コーンさん、が…?』
私はポッド君の言っている事が理解出来なかった。だって、コーンさんにも…勿論、デントさんにもだけど…具合悪いなんて一言も言ってない…。それに元々具合なんて悪くないし…一体何がどうなってるの…?
「一応、起きて来るの待ってたんだけどさ、昼近くになっても起きて来ねぇから心配になって来てみたんだよ」
『そう、ですか…』
「具合、どんな感じだ?熱とかは無ぇか?」
ポッドは心配そうな表情を浮かべながら、ナマエの額に掌を当て熱あるかどうかを確認しようとした。
「んー、熱は無ぇな。どっか痛い所とかは?気持ち悪いとか…」
『だ、大丈夫です!全然元気ですから…!』
(ポッド君、本当に心配してくれてるんだ…。本当は具合なんて悪くないのに…申し訳ないな…)
「そっか、なら安心だぜ。でも無理は良くねェから、俺様特製のお粥作って――…」
『・・・?ポッド、君…?』
お粥を作って来る、と言おうとしたのだろうか…突如、言葉の途中で黙り込むポッド。ポッドの表情は何処か険しい表情だった。
「ナマエちゃん…」
『は、はい…?』
「その首の跡…どうしたんだよ…?」
『…――ッ!!』
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