翌朝、鳥の囀りで目が覚めたナマエ。隣には未だ眠っている師の姿。朝目が覚めて隣にケフカが居るの事が初めてだったナマエ。

そっと、手を伸ばせばサラサラの金色の髪に指を絡める。細くて柔らかくて、女性の髪にも負けないくらい透き通ったその髪が美しく、そして愛おしく感じた。





師 と 私 と 





『綺麗な髪…』



自分よりも美しく綺麗な一本一本に、思わず口にしてしまうナマエ。



「…――んん、」



金色の髪を梳かす様に撫でていると、眠っていたケフカが遅れて目を覚ました。



『おはようございます、ケフカ様』

「ん、おはよう…ナマエ。先に起きてたんだね」



ふぁ、と軽く欠伸をしながらケフカは上体を起こした。



『ついさっき起きたばかりですよ。良く眠れましたか?』

「ええ、ナマエが隣に居るんです。良く眠れて当然でしょう」



そう言ってケフカはナマエの頬へ手を伸ばし優しく撫でた。少し擽ったかったのか目を閉じるナマエ。



『ケフカ様…』

「これから毎晩隣で寝て貰いますよ」

『え、毎晩ですか?』

「当たり前でしょう、ぼくちん達は恋人なんだから」

『恋人…』



ケフカの口から恋人という言葉を聞けば、どうしようもないくらいの嬉しさが込み上げてきた。思わず口元を緩めてしまいそうになったが、耐えて一文字に唇を結んだ。



「ぼくちんと寝るのは嫌?」

『と、とんでもないです。ただちょっと…嬉しくなって、どうしたら良いか…すみません、』



ナマエの言葉にケフカも同様に嬉しくなったのか、ナマエの腕を引き抱き寄せた。お互いに服を纏っていない為、互いの体温が直に伝い合う。



『ケ、フカ様…?』

「ワタシだって嬉しいですよ、ナマエ。そしてこのまま抱いてしまいたい」

『え、抱い…ッ、ダメです!』

「そんなに拒む事ないでしょ…」

『嫌とかじゃなくて、その…初めてだったから、まだ体力というか…痛いというか、何て言うか…ごめんなさい、言葉に出来なくて…』

「ククッ、冗談ですよ。ゆっくり身体を休めなさい。せっかく魔力が回復したというのに今度は体力の回復をしないといけなくなるとは、ナマエも大変だね」



昨晩、痛がっていたナマエの腰を摩るケフカ。



『だ、大丈夫ですよ。それよりも…ケフカ様、私シャワーを浴びて来ても良いですか…?』

「嗚呼、そうだねぇ。いってらっしゃい」

『はい、すぐ戻りますね』



そう言ってナマエは、一瞬だけ躊躇いながらも目の前の頬に軽く唇を押し当てた。勿論、直ぐに離れてしまえば慌てる様にその場を後にした。



「…全く、いちいち可愛いんだから」



唇の感触が残る頬に触れながら、ケフカも寝台から起き上がり普段のド派手な衣装を身に纏った。






*****




…――サァァ、と流れ出るシャワーの音。ナマエは鏡の前に立つ。鏡を見れば、昨晩ケフカが残したであろう紅い跡が首元だけでなく身体の至る処に見受けられた。女性ならではの白さが際立つナマエの肌故にそれはとても目立つものだった。



『…こんなに沢山、』



自分でも驚いてしまうくらいの数にケフカの愛とは別に独占欲さえも感じてしまう。けれどもいつかは消えてしまうであろうと思うと淋しさも感じた。消える前にまた残してくれるだろうか、そんな不安もあった。

そんな事を考えながらもケフカを待たせてはいけないと、ナマエは急いでシャワーを浴び浴室を後にする。



「ナマエ、」

『ケ、ケフカ様…!』



浴室から出るとそこにはケフカの姿があった。ナマエは慌てて準備していたバスタオルを手に取れば露わになったままの身体を隠した。



「もう隠す必要ないんじゃないの?」

『…は、恥ずかしいものは恥ずかしいので』

「ぼくちん、もうナマエの身体は隅々まで全部見ちゃってるのに」



ケフカの言葉にカァ、と頬を赤らめるナマエ。確かにケフカの言っている事は間違いないが、やはり裸体を晒すのは恥ずかしいものだ。



『あ、あの…服を着たいのですが…』

「どうぞ?」

『や、あの…ケフカ様はいつまで此処に…』



一体、ケフカは何をする為に此処に居るのか。部屋で大人しく待っていてくれているものとばかり思っていたのに。ケフカは一向にナマエの前から動こうとはしなかった。



「早く服を着ないと風邪引いちゃうよん」

『・・・ッ、』



わざと此処に居るのだと悟ったナマエは観念したようにバスタオルを離し、なるべく急いで下着を纏い部屋着に着替えた。始終、ケフカは食い入る様にナマエを見つめていた。



「あーら、もう終わっちゃいましたか」

『も、もう…ケフカ様やめて下さい…』

「ヒッヒッ、冗談ですよ。ちょっと揶揄っただけだからさ」


酷いです、とナマエは唇を尖らせながら、まだ濡れていた髪をタオルで拭う。すると、タオルの上からケフカであろう手が重ねられた。



『わ…ッ、』

「ぼくちんが拭いてあげるから、そのままね」

『あ、ありがとう…ございます…』



髪を拭いて貰う事も初めてだったナマエ。ドキドキと胸を高鳴らせた。



「髪を乾かしたら食事にしましょうか」

『はい、』



沢山の初めてを経験した特別な時間に、ナマエは幸せを感じながらケフカに頭を預け、ゆっくりと瞼を閉じた。




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