『え…?』



私は一瞬耳を疑った。コーンさんは一体何を考えて言っているのだろう…?私を助ける?一体何から?…デントさん、から…?



『それって、どういう…』



困惑するナマエを目の前にコーンは口許を少しだけ緩め、ナマエの耳元から近付けていた顔をゆっくり離した。




「"今の状況"からですよ」











『今の、状況…?』

「ナマエさんは今の状況をどうにかしたいのでしょう?」

『それは、そうですけど…』

「ですから、助けて差し上げると言っているのです」



コーンはナマエの傍から離れるとクルリと背を向け、自身の顔の傍で人差し指を立て、何やらポーズを取っている。



「今の状況をどうにかしたいのであればコーンの言う通りにして下さい」

『…もし、言う通りにしなかったら?』



正直、不安…というより怖かった。コーンさんが一体何を考えているのか分からない。現状をどうにかしてくれようとしているのだろうけれど、私を助けようというわけではなくコーンさん自身が愉しんでいるようにも見えた。



「言う通りにしなかったら、ですか…?そうですねぇ、それはその時のお楽しみという事で」


お楽しみか…、きっと楽しみにしているのはコーンさんだけなんだと思う。楽しみになんて出来るわけないじゃない…。



『…お断りします』

「何故ですか?」

『コーンさんは一体何を企んでるんですか?』

「企む?人聞きの悪い言い方ですね」

『ごめんなさい、でも…』

「…分かりました。ではお教えしますので少しの間だけ目を瞑って頂けませんか?」

『目、を…ですか?』

「はい」



ナマエは一瞬戸惑うも、コーンの言う通りゆっくりと目を閉じた。



「良い子ですね。良い子には御褒美を差し上げなくては…」

『え……――ッ!?』



目を閉じた途端、首筋にチクリと小さな痛みが走った。一体何が起こったのか、と慌てて閉じめいた目を開ければ、目の前には涼し気に微笑むコーンの姿があった。

痛みの走った首筋を押さえながらコーンを見つめるナマエ。そんなナマエの姿にコーンは何処が満足気の様子だ。



『い、今…何したんですか…?』

「いえ、特に何もしていませんが?」

『嘘…!今、チクッて――…!』

「鏡を、」

『え…?』

「鏡をご覧になれば直ぐにでも分かりますよ」

『か、がみ…』

「では、コーンはこれで失礼しますね」

『え、ちょ…!』



引き留めようとするナマエを他所に、コーンはスタスタと軽い足取りでナマエの部屋を出て行ってしまった。そんなコーンに、ナマエは唖然としている。



『な、何あれ…』



コーンさん、さっき「お教えしますので」って言ったくせに何も教えてくれないまま出て行っちゃった…。



『そ、それより鏡…!』



コーンの言葉を思い出したナマエは慌てて鏡が設置された洗面台へ移動した。鏡を覗けば小さな痛みが走った箇所を確認するナマエ。確認した箇所には1センチ程の赤い痣のような跡が付いていた。





『何これ…?も、もしかして――…』






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