…――結局、僕はナマエさんを怖がらせてしまっただけだ。好きになって欲しいが為に自ら過ちを犯してしまった。




「自分が情けない…」











扉の前で両方の拳をギュッと握り締めながら下を俯くデント。自分が取ってしまった行動に後悔している様子。



(好きになって貰うどころか、嫌いになられるような事をしてしまうなんて…)



考えれば考える程、次第にズキズキと痛み出す頭。デントは額を押さえながら、ゆっくりと寝台へ歩を進め始めた。



「今日はもう休んだ方が良さそ――…!」



寝台で横になろうと寝台の傍まで近付いたデントはナマエが忘れてしまった卵の存在に気付く。



(卵、忘れてる…)



きっと、ナマエさんは自分の部屋に居るに違いない。だけど…今、卵を届けに行くのはマズイ…。急がずとも明日にでも渡せば良い。



デントはナマエが忘れてしまった卵を枕元に移動させるとズキズキと痛む額を押さえながら寝台へ横になり次第に眠りに就いた。







*****




『どうして、コーンさんが…』

「こんにちは、ナマエさん…少し宜しいですか?」



デントの部屋に忘れてしまった卵を取りに戻ろうと部屋の扉を開けると、扉の向こうにはコーンの姿があった。



『あの、何か御用ですか…?』

「ええ、少しだけ。部屋の中、入っても良いですか?」



コーンは「こんな所で立ち話も何ですから」と言って、ナマエの部屋に入って良いか尋ねた。突然の事に少々戸惑い気味のナマエだったが、取り敢えずコーンの言う通りだと思い、コーンを部屋の中へ招き入れた。



「お邪魔します」

『あの…御用って?』

「用と言う程の用ではありませんが、少し気になる事がありまして…」

『き、気になる事…ですか?』

「先程、デントの部屋に居ましたよね?デントの様子がおかしかったので何かあったのかと…」

『い、いえ…』



(私がデントさんの部屋に居た事、コーンさんにバレてたんだ…。そりゃ、そうだよね…)



「ついでに言いますと、ナマエさんも少し様子がおかしいですね」

『え…、』

「一体部屋で何があったんです?」



コーンは真剣な眼差しでナマエを見つめている。そんなコーンに嘘は吐けないと思ったナマエは先程のまでの出来事を漸く語り始めた。



『あの…何ていうか、私もデントさんの様子がおかしいなって思って、デントさんに尋ねてみたんです。そしたら何もないって言うから、本当なのか疑っちゃって…』

「それで?」

『えと、それでデントさんが話を聞いて欲しいって言うので部屋に行ったんです。そしたら、デントさんの事を好きか嫌いかを聞かれて…デントさんは私の事を好きって言ってくれたんですけど…』

「やはり、デントはナマエさんに惹かれていたんですね」

『え…知ってたんですか?』

「デントを見ていれば分かりますよ。大方、ナマエさんと仲良くするポッドに嫉妬していたのでしょう」



コーンは近くに設置されたソファーへ腰を下ろすと"やれやれ…"といった表情を浮かべながら話を続けた。



「それに良く考えみて下さい。初めて会った人間相手に危機から助けた上、部屋まで用意すると思いますか?」



言われてみれば、コーンの言う通りだ。見ず知らずの人間に部屋を用意してまで一緒に住もうなんて普通では有り得ない。



「デントは最初からナマエさんに惹かれてたんですよ」

『そ、そんな…』

「でなければ、デントがあんなに取り乱すわけないでしょう」

『でも、私…正直言うと、デントさんの事…好きかどうか分からないんです…』



ナマエはソファーに腰を落ち着かせるコーンの目の前に立ち、デントの部屋がある方の壁に視線を向けた。



「それはそうでしょうね。まだデントと出会って間もないですし…」

『はい…』



コーンはソファーから立ち上がると、目の前に立つナマエに近付けばナマエの耳元に口許を寄せ囁くように言葉を紡いだ。





「…コーンが、ナマエさんを助けて差し上げましょうか?」




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