私、何でデントさんに押し倒されてるの…?私はただ"理由を教えてくれたら答える"って事に賛成しただけなのに…。
ジワジワを近付いてくるデントさんの顔。触れそうで触れない互いの鼻先。私はどうして良いのか分からず、ただただ視線を彷徨わせた。
君 を 護 る た め に
デントは寝台にナマエを押し倒し、ナマエの両手首をシーツに縫い付けている。ナマエは突然の出来事に何が起こったのかを把握出来ていない様子。そんなナマエに向かって、デントはニコリと緩い笑みを浮かべた。しかし、デントが浮かべた笑顔は何処か冷たいような気もする。
「ナマエさん、僕はね…」
ナマエに覆い被さったままのデントが静かに言葉を紡ぎ始めた。
「ナマエさんの事を好きになってしまったみたい。その所為で僕自身…気持ちを制御出来なくなってしまっている状態なんだ…」
『え…』
(私の事が、好き…?)
デントからの予想外な発言に困惑の色を隠せない様子のナマエ。
「僕が言いたい事、分かるかな?」
デントからの問い掛けにナマエは無言で首を横に振って応えた。ナマエの返事にデントは困ったように苦笑いを浮かべている。
「分かってくれないんだ…?それは困ったなぁ、」
…――デントさんは一体何を考えてるの…?そんな事言われても分かるはずないよ…。
私はデントさんに押し倒されたままの状態で暫し無言でデントさんの言葉を聞いていた。すると、突然掴まれていた手首に痛みが走った。
『痛…ッ!』
ナマエの両手首を掴むデントの手に力が入った為、デントさんの爪が皮膚に食い込んだ。突然手首に走った痛みの原因はそれだ。
「言わないと分からないなんて、鈍感なんだね…」
『り、理由を言うって言ったのはデントさんの方じゃないですか…!』
「…言ったじゃないか」
『言ってません!私が聞いたのは、デントさんが私の事を好きになった事と気持ちの制御が出来なくなったという事だけです!』
「だから、それが理由だって言ってるんだろ!?」
普段は温厚なはずのデントが珍しく大きく怒鳴り声を上げた。初めて怒鳴るデントの姿を見たナマエは先程までの威勢を失くし、ただただ驚いている。
「…ッ、ゴメン。僕とした事がつい…」
無意識でナマエに怒鳴ってしまった事に詫びるデント。デント自身も口許を片手で押さえ驚いている様子。
『…やっぱり、私にはデントさんの考えなんて分かりません』
未だ驚いた様子のナマエ。デントの考えが分からない、と言葉を紡ぐも視線はデントに向けておらず他所に向けていた。
…―――コンコン
すると、突如デントの部屋の扉をノックする音が室内に響いた。
「デント?居ますか?今、大声が聴こえましたが…大丈夫ですか?」
声の特徴からして部屋を訪れたのはコーンだろう。そう判断したデントはシーツに縫い付けていたナマエの両手首から手を離し、覆い被さっていたナマエの身体から退くと寝台から降り、部屋の扉の方へ向かった。
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