デントに手を引かれ、デントの部屋へ向かったナマエ。
デントさんの部屋に入るのはこれで二度目だ。でも、何でだろう…初めて、デントさんの部屋に入った時は何ともなかったのに…今は少しだけドキドキする…。
「どうぞ、入って」
『お、お邪魔します…』
デントは自室の扉をゆっくり開けると、ナマエから先に入るよう促した。ナマエが部屋に入ると、その後に続きデントも部屋に入り"パタン…"と静かに扉を閉めた。
君 を 護 る た め に
部屋に入ったものの座って良いのか、このまま立っていた方が良いのか迷っているナマエに「取り敢えず、座ろうか」と再び手を引き、座る為にあるはずのソファーではなく、デントの寝床であるベッドにナマエを座らせた。
「ナマエさん、」
『は、い…』
(話って、一体何だろう…?変な事じゃなきゃ良いんだけど…)
ナマエは小さな不安を胸に抱きつつも、己を見つめてくるデントに恐る恐る視線を合わせた。
「どうして、僕がいつもと違うって思ったの?」
『そ、れは…何と言いますか…普段はもっとハキハキされてらっしゃるのに…、さっきのデントさんは表情がいつも違うような感じでしたし…返事の仕方も少し違ったと言いますか…』
「そっか、案外ちゃんと見てるんだね?僕のこと」
『そ、そりゃ…!』
「・・・?」
あれ…、私ってば何で「そりゃ」なんて言葉出しちゃったんだろう…?そりゃ…そりゃ…、何よ…何が言いたいのよ、私は…。
「ねぇ、ナマエさん…」
『はい…、ッ!?』
数十秒間、ナマエが言葉の続きを頭の中で探していると、デントが再びナマエの名を口にした。それと同時にデントの顔がナマエの顔に近付いてきた。
流石のナマエもデントの顔が近付いてきた事には驚きの表情を隠せず、片手をシーツにつけ近付いてくるデントの顔から距離を置こうした。…―が、デントは更に顔を近付けてきた。
『ちょ、…と、デントさん…!』
「ナマエさんはさ、僕の事…どう思ってる?」
『え…?』
デントの口から紡がれた予想外な問い掛けに、一度は聞き返すような仕草を見せるも、質問された内容は理解していた為に何と答えて良いのか分からず、戸惑いの色を隠せない様子のナマエ。そんなナマエを更に追い込むように、デントは耳元で囁くように質問を重ねた。
「好きか、嫌いか…どちらかを答えれば良いんだよ?」
『そ、そんなの…』
(な、何で…好きか嫌いかなんて…、そんなの答えられるわけ…)
「…――じゃあ、ポッドの事は?」
『え…』
「ポッドの事は好き?嫌い?」
…どうして、ポッド君の事を聞くの…?そりゃ、好きか嫌いを聞かれたら…嫌いじゃないのは確かだけど…。でも、ポッド君には色々と助けて貰った事もあるし…、それに一度だけだけどポッド君と居ると心が落ち着いた時もあった…。
いつも元気一杯で、優しく接してくれるポッド君を嫌いになれるはずがない…。そうなると、やっぱり好きって事になるのかな…?でも恋愛感情とかじゃない、とは思う…。
「ナマエさん、答えてくれないかな?」
『…何で、ですか…?』
「理由を言ったら答えてくれる?」
デントの言葉に、一度だけ視線を下に伏せるナマエ。数分間、デントの問い掛けに何と答えようか悩んだ挙句、ナマエは顔を上げては首を縦に振った。
『…答えます』
「そっか、それなら話は早いよ」
…―――ドサッ
『…――え?』
突如、私の視界はぐるりと反転し、視線の先はデントさんの顔と広い天井だけだった。
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