今、ナマエさんが一番心を許しているのはポッドだ。その次に僕…と言ったところだろう。けれど、僕とポッドの差はかなり大きいような気がしてならない。
何で、こんなにも差が開いてしまってのだろう…。ポッドに有って僕に無い物…一体何なのかが分からない。だけど、このままでは更にポッドに引き離されてしまうような気がする…。
(冷静になれ、冷静になるんだ…)
君 を 護 る た め に
「いつ産まれンだろうなー?」
『まだまだじゃないですか?』
「産まれそうな時はちゃんと俺に報告してくれよ?」
『は、はい…!』
「ナマエちゃんが母親で俺が父親ー…なんつって」
『ちょ、ちょっと…それは…』
思いも寄らぬポッドの発言に否定しつつも頬を赤く染めるナマエに、デントは内心苛立ちを隠せなかった。勿論、表情には出していないが…。
「ハハッ、冗談だって!んじゃ、俺は店の方に戻るからよ」
『が、頑張って下さい…!』
「おう!行こうぜ、コーン」
「言われなくても分かっていますよ。ナマエさん、また後程…それから、デントも落ち着いたら店側を手伝って下さいよ」
「う、うん…分かった」
反応が鈍いデントを横目に、先を行くポッドに続いてコーンもバトル部屋を後にした。
『やっぱり、ジムとお店を両立するって大変そうですね』
「え、あ…うん、そうだね」
『デントさん、どうかされました?』
普段とは違うぎこちない返事が気になったのか、ナマエはデントに向かって首を傾げている。
「ううん、何でもないよ」
『本当ですか?そうには見えませんけど…』
デントは「何でもない」と返すが、明らかに何処かおかしいと思ったナマエはデントの顔をジロジロと覗き込みデントの表情を伺った。
「ほ、本当に何でもないから…!」
(だから、そんなにジロジロ見ないでくれ…!本当にどうにかなりそうだ…)
ナマエさんには分からないだろうけど、好意を抱く相手に例え理由が何であったとしてもジロジロと顔を見つめられては平常で居られるわけがない…。
デントはジロジロと顔を見つめてくるナマエの視線から逃れるべく、ナマエにくるりと背を向けた。
「…ナマエさん、疲れてるだろう?部屋に戻って休んでて良いよ」
『デントさん…』
デントはナマエに背を向けたまま、少々焦ったようにナマエに声を掛ける。しかし、デントの焦った声色に違和感を感じたナマエはデントの袖を"キュッ"と掴んだ。
「・・・ッ!ナマエ、さん…?」
『デントさんはズルイです…』
「え…?」
『私の事はこれでもかってくらいに心配してくれるのに…』
「そ、それは―…」
『デントさんと会ってから、まだ間もないですけど…いつもと何か違うって事くらい少し居れば私にでも分かります…』
「…それ、本気で言ってる?」
『え…』
(私、何か変なこと言っちゃったのかな…?)
突如、向けられたデントからの鋭い視線に袖を掴んだまま片足を一歩だけ後退るナマエ。
「今の、本当にそう思って言ったの?」
『は、はい…』
(何だか、急に目の色が変わったような…。やっぱり、デントさんの様子が少しおかしい…)
「…そっか。じゃあ、少しだけ僕の話を聞いてくれないかな?」
『は、話…ですか?』
「うん、駄目かな?」
『…いえ、駄目なんかじゃありません。私で良ければ…お話、聞かせて下さい』
ナマエの返事にデントは"ニコリ"と微笑むと、袖を掴んでいたナマエの手を一度離し、代わりに反対の手で離したナマエの手を握り締め、デント自身の部屋へと向かった。
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