『あの、デントさん?』

「ん?」

『お店やジムの事は良いんですか…?』

「うん、大丈夫だよ。コーンとポッドに任せてあるから」



大人しくデントの後を着いて行くナマエ。デントが向かった先は三番道路だった。











『あれ、この道って…』

「前に通った事あるよね?僕に背負われて」

『あー…』



(そういえば、そんな事もあったんだっけ…)



「どうかした?」

『あ、いや、すみません…!』

「謝らなくて良いさ。ほら、もう直ぐ着くよ」

『え、』



(も、もう…?ついさっき街を出たばかりなのに…)



「ナマエさん、こっちだよ」



キョロキョロと周辺を見渡していると、いつの間にかデントさんと距離が出来てしまっていた。

デントさんに呼び止められ、慌ててデントさんの元へ駆け寄れば目の前には一軒の家があった。その家の直ぐ隣には大きな庭もある。



『あの、此処は…?』

「まだ秘密。僕が言わなくても中に入れば直ぐにでも分かると思うよ」



そう言って、デントは目の前にある家の扉を"トントン"と少し強めにノックした。ノックをして数秒後、家の中から「はーい」という女性の声が聞こえてきた。



「すみませーん!デントです!」

「はーい、はいはい」



家の中から出てきたのは老人の女性だった。デントさんと知り合いなのだろうか…?



「こんにちは、お婆さん」

「おやおや、デント君じゃないか…んん?そちらのお嬢さんは何方だね?もしや、このお嬢さんがデント君の言っていた子かい?」

「はい、彼女がナマエさんです」

『え、あ…あの…』



(え、え…?何コレ、一体何が何だか…!このお婆さんは一体誰…!?)



デントに紹介されたものの現状が把握出来ないナマエは、唯々混乱するばかり。



「可愛いお嬢さんじゃのう。ワシはこの家でポケモンを育てておるんじゃ。育て屋の話は聞いた事ないかね?」

『え…そ、育て屋…?』



この家、ポケモンの育て屋だったの…?全然分からなかった…。というか、育て屋なら育て屋だって教えてくれれば良いのに!



「そうじゃ。まぁ、こんな所で立ち話も何じゃから、二人とも中に入りなされ」

「すみません、お邪魔します」

『お、お邪魔します…』



家の中に入ると、家がヒノキで作られていた為かヒノキの良い香りがふんわりと漂っていた。



「何か飲みたい物でもあるかね?」

「いえ、大丈夫です。お気遣いなく。…それより、お願いしていた件なんですけど…」

「ああ!そうじゃった、そうじゃった!ちゃーんと準備は出来ておるよ」

「本当ですか!すみません、無理を承知でお願いしてしまって…」

「良いんじゃよ、デント君にはいつも世話になっておるからな」

「いえ、そんな…」




…――全然話の内容が分からない!一体、育て屋に何の用があるの…?お願いって?あー、もうッ!何で何も教えてくれないのよー…。デントさんって少しだけ意地悪な所があるんだなぁ…。




「ちょいと待ってておくれ。直ぐに用意してくるからのう」

「はい、分かりました」



育て屋のお婆さんは「用意してくるから」と言って部屋の奥へと消えてしまった。話の内容からして、はっきりとは分からないがデントさんが育て屋のお婆さんに何かを頼み事をしていて、その準備が出来ている…という事だろうか?



『あのー…』

「ん?」

『育て屋に何しに来たんですか?』

「もう直ぐ分かるよ」

『さっきから、そればっかりじゃないですかー!直ぐ分かるって言ってますけど、全然分かる気配がしません!』

「まぁまぁ、そう焦らないで…」



何も教えてくれない事にとうとう限界が来てしまったナマエは、デントに強制的に何が目的だったのかを吐かせようとした。…――が、デントはやはり教えてくれなかった。

程なくして、先程部屋の奥に消えていった育て屋のお婆さんが再び部屋の奥から姿を見せた。お婆さんの手には白い布が被せられた物が抱えられている。



「おやまぁ、二人とも仲が良いのぅ。ほれ、頼まれておった奴じゃよ」



そう言いながら、お婆さんは手に抱えていた物を覆う白い布を剥ぎ取った。





『こ、これって――…!』






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